Short2
□燃えた約束
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徳川の裏切り、半兵衛様の病死、秀吉様の死
様々な不幸が彼に襲いかかって来た、私と大谷が彼の傍に居ても、彼は……三成はこの世界を恨んだ
「やれ三成…少しは寝たらどうだ?」
「刑部……貴様こそ体に障る、寝ろ」
「作用か……三成も寝るといい」
「……うるさい、寝ろ」
今晩も三成はろくに寝ないようだ、少しは大谷の気持ちも考えたらどうだろうか……
そう思いながら、二人が話しているところに向かう
「大谷、三成、私は先に寝かしてもらう」
「……ナマエも少しは三成に声をかけたらどうだヒヒッ…」
私の言葉に、大谷は不気味に笑いながらそう言ってきた
それを聞いて、三成は眉間により皺を寄せて
「何度も言わすな、私は今日は寝ない、刑部!!早く寝ろ!!ナマエは少し黙れ!!そして寝ろ!!」
と、少しイライラしながらそう言ってきた
私も流石にムッと来て
「うるさいのはどっちだ!!大体三成、お前は飯もろくに食べない、ろくに寝ない、そんなんでいざ動こうとしても動けないだろう!!」
と、言い返した
「何だその口の聞き方は!!半兵衛様も言っていたぞ、もう少し女子らしく振舞って欲しいとな!!」
「半兵衛様は関係ないだろ!?私はお前に言ってるの!!このヒョロガリ!!」
「今何と言った!!ヒョロガリ!?」
「そうだ!!三成なんてヒョロガリだ!!ヒョロガリのくちばし前髪!!」
「きっ……貴様ぁぁぁぁ!!!!」
そう三成と言い合っていると、大谷は手を私達の前に出して間に入ってきた
そして、フワフワと宙に浮いている数珠玉をゆっくりと回転させながら
「やれ二人共落ち着け、ナマエの言い分も三成の言い分も間違っていぬ、ここは落ち着き寝たらどうだ?ヒヒッ…」
そう言ってきた
よっぽどアホらしかったのか大谷の肩は小刻みに震えていた
私と三成は顔を見合わせて、舌打ちをして部屋に戻った
少し遅れて襖の閉まる音がして、大谷も部屋に戻ったと理解した
私は布団に入り、寝る事にしたが、何故か眠れなかった
深夜、隣の部屋で誰かが泣いているような声が聞こえた
「……幽霊……じゃないよね」
若干、怖がりながらそう言い、壁に耳をつけてみると
「秀吉様……私はどうしたらいいのでしょうか…貴方様が亡くなって私は……半兵衛様、ナマエはいつになっても女子のように振る舞いません……何故…病の事を私に言ってくれなかったのですか…」
と、三成が秀吉様と半兵衛様に何かを言っていた
声色から泣いているのが分かった、私は一晩中、三成の言葉を聞き続けた
何故か聞かないといけない気がした、三成が普段秀吉様と半兵衛様をどう思っているのか……
壁から伝わる声は届く筈の無い言葉なのに、何故か私は三成の言葉が聞ける秀吉様と半兵衛様が羨ましく思えた
「何でだろ…あんなヒョロガリ」
そう呟いたが、頭の中ではなんとなく分かっていた
でも、この気持ちは抑えないといけない、今、三成に必要なのは私じゃない、秀吉様と半兵衛様だ
大谷は三成の右腕……私は三成にとって何なのだろうか…
「そう考えてる時点で、大谷や秀吉様と半兵衛様には適わないのかな……」
私の言葉は真夜中、真っ暗な空に浮かぶ満月に吸い込まれる様に消えていった
ひんやりと冷たい風が当たる頭で、気が付かなければ良かったなと、考えた
私のこの気持ちは、この乱世の中では必要のない物だから、私が死ぬまで……この乱世が終わるまで抑えておこう……そう思った