出口はどこでしょう?

□二話
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"深海の世"の中に入ってから、どのくらい経ったのか、もしかしたら入ってからすぐなのかもしれない、とにかく私は気が付くと見た事ない黄色い部屋に立っていた


「……なんだろう…ここ」


床、壁、その他様々なものが黄色で塗られていて若干不思議な統一感すら感じる、キョロキョロと周りを見渡すとなんとも不気味な人形が天井からぶら下がっている

少し怖がりな性格の私はその人形を見ているだけでも足が震えてきてしまう、とりあえず人形から距離を置こうと反対側に向かってゆっくりと周りを警戒しながら歩いた

パタパタと足音が静かな空間に響く、それがまた恐怖心を駆り立てる、先程調べたが来た道もないようで戻る事は出来ないようだ、入ってしまって本当に大丈夫だったのかとも思ってしまう

しかしこうなってしまっては先に進むしかない、先に進めばいつか出口が見つかるだろう、そうポジティブに考えて私は歩き続けた、ふと目の前にこの空間には合わない一際目立つ色をした物を見つけた


「……バラの花…?」


机の上にポツンと置かれ、丁寧に花瓶に活けてある真っ白な白いバラの花、それにゆっくりと近付き手に取ってみると不思議と気持ちが落ち着くような気がした

思わずその嘘のように真っ白なバラを見下ろす、思わず先程の展覧会で見た大きなバラの作品を思い出した


「タイトルは確か……"精神の具現化"」


"一見美しいその姿は、近づきすぎると痛い目に遭い、健全な肉体にしか 咲くことができない"

確かそう説明文に書いてあった気がする、これでも少しは記憶力は良い方だ自身はある、しかしどうにも腑に落ちない私はもう既に手に取っているのに痛い目には今のところ遭っていない、それに健全な肉体と言うが私は自分がそこまで出来た人間だとは思えない

とにかく今はこの白いバラがここにある理由を知りたかった、バラから視線を下げると一枚の紙が視界に入った、少し身を屈め書いてある文章を呼んでみた

"そのバラ朽ちるとき、貴女も朽ち果てる"

"バラとあなたは一心同体、命の重さ知るがいい"

読みやすい綺麗な字でおぞましい事が書かれていた、思わず冷や汗をかいてしまい持っていたバラを少し強めに握りしめた


「ヒェッ……」


情けない声を上げながらゆっくりとその場から離れる、しかし反対側にはあの不気味な人形が吊るしてあるので必然的にこの空間に来た時に立っていた場所に戻る、振り出しに戻ってしまったこれじゃあ先に進めない

そう言えば机の隣に扉があったと、重要なことを思い出し恐怖心を振り払うように頭をブンブンと振ってから意を決して歩いた

"ウソつきたちの部屋"と黄色の絵の具のようなもので書かれた文字の隣にある黄色の扉を開けようとした時、パタパタと人が歩くような音が響いた、驚いて勢いよく音がした方へ視線を向けるとまたもやこの空間に似合わない赤色が見えた


「人……?」


正体は十歳か九歳の小さな女の子だった、赤色はその女の子が着ているスカートの色だった、私の声に反応して反対側を見ていた女の子は先程の私と同じように勢いよく振り向いた、手にはスカートの色と同じ真っ赤な色をしたバラが握られていた

女の子はその真っ赤なバラの色を移したように瞳の色も赤く、自然と赤が似合う女の子だなと気の抜けた事を思った
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