白銀花が咲く夢を見る

□第十訓
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一旦部屋に戻ってから自分の私服を取り出してお風呂に入ってから私は銀時の着物を洗濯した

さっきまで着物が少し大きかったせいか、ずり落ちない様にきつく縛っていたので結構苦しかったが自分に合ってる着物なら息苦しくなる事はなかった

完全に水気が飛んだら山崎か誰かに包帯を巻いてもらおうと思い、私は部屋に戻った

少しだけあの日まで毎日欠かさず読んでいた小説を読んでいた頃、誰かが私の部屋をノックしてきた、丁度水気も飛んだ頃だしついでにコイツに包帯を巻いてもらおうと思い私は気分上々で襖を開けた


「無様に大怪我して帰ってきた花無為さんはいますかィ?」

「そんな事を言う奴は帰れ」

「嫌だなァ冗談じゃないですか」


と開口一番に憎たらしい台詞を言ってきたのは珍しくノックをしてきた沖田だった、どうやらお風呂上りなのか首にはタオルを巻いていて私服だ

沖田は襖を閉めさせないように押さえながら部屋に入ってきた、ポタポタと髪の毛から水滴が畳に落ちた

それを注意しつつとりあえず座布団を渡して何しに来たか聞いてみる事にした、しかし沖田は先程と同じ台詞を吐くだけだった


「お前なぁ……」

「あとついでに包帯を巻いてあげましょうかと思いやして」

「……あんまり信用出来ないんだが?」

「酷いなぁ少しは信じてくださいよ」


そう言いながら沖田は懐から救急グッズを取り出した、そんな沖田に疑いの目を向けつつ背中を向ける

傷がある方の肩を出して前の方は自分でやるために沖田から包帯をもらう、グルグルと胸の辺りまで包帯を巻き沖田に渡す

そのまま沖田は珍しく優しく傷口に包帯を巻いていった、副長といい沖田といい怪我をするのもなかなか悪くないかもしれないなんて思った瞬間沖田が強めに傷口に触れた


「い"っっっ!?」

「あー、すいやせん手が滑りやした」

「このヤロッわざとだろ!!」


喉の奥から絞り出すような声で沖田に怒鳴ると沖田はそんな事ないと言いながらまた優しく傷口に包帯を巻きだした

次やったら許さないと思いながらも結局私は最後まで沖田に包帯を巻いてもらった、もちろん最後の最後で傷口を包帯の上から叩かれた

文句を言いつつ服を着ていると沖田が急に私を見て笑い出した、人が痛みに耐えている所を見て笑うなんてコイツはなんて奴だと思いながら沖田を見ていると


「中々元気そうで安心しやしたよ花無為さん」


と言ってきたあまりに唐突な言葉に思わず目をパチクリしている私を他所に沖田は安心しきった表情で口を開いた


「花無為さんから連絡がなかった時もしかすると殉職しちまったのかと思いやしてね……そうなると副長補佐に空きが出て順番的に俺がそれになるんですよ、そうなると俺は名前的にも立場的にも明らかに土方さんの下に就くんですよそれが嫌なんでさァ」


ペラペラと私が怪我した時の事を話し出してきたが、殉職とか副長補佐に空きが出るとか中々毒の強い事を言ってくる所が沖田らしい、だが遠回しだが私を心配していたと言っているのは事実だ

結構不器用な男だと思うと私は思わず笑ってしまった、そんな私を眉をひそめながら見てくる沖田

そんな沖田に謝りつつ礼を言うと沖田は言いたかった事はこれで終わったと言って襖を開け始めた


「沖田、ありがとうな」

「…………」


沖田にもう一度礼を言うと黙ったまま何も言わずに廊下に出て襖を閉められてしまった、なにか返事が欲しかったと思いながら私は布団を敷き始めた
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