白銀花が咲く夢を見る
□第八訓
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「甘ェよ花無為」
自分の肩がやたらと熱く感じたがなんとなく冷たい感触もしていた、熱さと冷たさが同時に来ると言う変な体験をしている中高杉の声がやたらと耳に届いた、刀を握っている手に力が入らなくなってそのうち刀を手放してしまった
「……本当、アンタって予想外の動きするよね……」
地面に落ちた自分の刀を見つめながら高杉に向かって悪態を付いた、それを高杉は鼻で笑って返した
きっと今の私の肩には高杉の折れた刃が刺さっているのだろう、高杉は私が武器破壊をした瞬間、折れた刃を私の肩に突き立てたのだ
柄の部分の刃なら警戒していたが高杉は折れた切っ先の方を掴み私に突き刺したのだ
「痛ッ……」
「悪いな花無為、お前が生きていた事には驚いたし、正直嬉しかったが……幕府の犬に成り下がったテメェに対しての情はねぇ」
「酷いヤツだな……私の人生の半分を全否定か……」
惨めにも膝までついてしまった私を見下ろしながら高杉は静かに私に向かって怒りを露にした、そんな高杉に私は笑いながらツッコミを入れた
いつもなら返ってくる呆れたような言葉はもう高杉からは返ってこない、なんとなく悲しくなったのは多分まだ覚悟が足りないのかもしれない
そんな事を思っている間に、高杉が柄がついている方の刃を私向けて振り上げ、変わってしまった目で私を見下ろしている
「再会してすぐにお別れか……」
「黙れ、元々俺の知ってる裟維覇花無為はあの日に死んだんだよ、テメェが俺達の前からいきなり消えたあの日にな」
「裟維覇花無為は目の前にいるのに……」
「……どの道もう消える」
高杉は私に冷たくそう言い放ち刀を振り下ろした、その刀を私は自分の刀を拾い防いだ
お互いの刀の向こう側で高杉が驚いたような表情をした、その隙に高杉のバランスが崩れるように刀をずらし高杉の腹目掛けて刀を振った
惜しくも掠った程度だったが高杉のテンポを遅らせるには充分な攻撃だ、お返しのつもりで今度は肩目掛けて峰の部分を振り下ろした
ゴツッと骨と刀が接した嫌な音が聞こえた瞬間腕を引っ込めた高杉だが、そのまま途中まで振り上げていた柄がついている方の刀を振り下ろした
肩から腹部にかけて熱が広がり、私はついに倒れ込んでしまった、どうやら肩から斜めに斬られたようだ
「……残念だとは思ってる」
どんどん暗くなっていく視界の中高杉の声が聞こえ、私は少し目を瞑る事にした
しばらく眠気が襲ってきた時のようなフワフワとした意識の中、急に仰向けの状態にされた気がしたので目を開けたが薄らとした景色しか見えなかった
確か最後に見たのは夜の空とは対照的な真っ白いモコモコとした髪の毛のような物だった、どこかで見た事があるような気がしたが思い出す前に意識を失った