白銀花が咲く夢を見る

□真選組上京
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許可が降りたが私はこの武州から離れるのは少し気が引けた、なによりここで知り合った人達と別れるのは少し悲しかった

特に沖田の姉であるミツバさんは私とよく話をしてくれてとても良くしてくれたいい人なのだが、土方さんと恋仲だった筈が着いて来ないと言っていた

それでいいのかと聞きたかったが私はそれ以上の事を言う権利はないと思い、ミツバさんの気持ちを汲んで黙っていた


「いいんですか土方さん」

「……なんだよ」


もう出発の時間だ、荷物をまとめて門の前に立っている土方さんにミツバさんの事を聞くが土方さんは気にしていないようだ

なんとなく土方さんの顔が悲しく見えて私は思わず黙ってしまいそうだった、だがミツバさんはあの時確かに泣いていたのだ、私に謝りながら静かに涙を流していた


「ミツバさんですよ……」


土方さんにそう言うと一瞬私の方を向いて土方さんは小さく溜め息をついた、そして私の額にデコピンをしてきた

コツンッと言う音と共に私の額には鈍痛が走り思わず額を押さえてしまった、きっと私の額は赤くなっているだろうなんて人だ

文句を言おうとしたが土方さんの言葉で私は思わず黙ってしまった


「いいんだよ、これで」


そう言う土方さんは今まで見た事ない悲しい顔をして髪の毛をクシャリと少し乱暴に掻き上げた

そんな土方さんをジッと見ていると近藤さんが出発すると言ってきたので慌てて門の外に出た

ミツバさんや他の人達に挨拶してから出発するとミツバさんは私達を見ながらずっと手を振っていた、私の隣の沖田は一瞬だけミツバさんの方を振り向いてからすぐに前を向いた

本当にミツバさんを置いて行っていいのかと問い詰めたくなったがこれはきっと私では関われない事があるのだろう

私は私の決意を固めないといけないのだ、上京をして幕府の下に就くと言う事はかつての仲間を斬る事にもなるのだから

ギュッと目を瞑り決意を固める、これが私の進む道なのだ、誰になんと言われようが私はこの道を進むしかない

無事に上京も出来て真選組と言う新しい私達の組織が完成した、部屋も用意されている、制服も渡されたが男物だったのは許せない、だが今まで男物だったのだ別にいつもと変わらないだろうと思い許す事にした

私は土方さんの補佐役と言う地位を手に入れたが真選組副長補佐と言う長ったらしい単語にいまいち実感が沸かない

まだ完成したばかりで隊士なども集めないといけないので仕事が多いがあまり深く考えるなと近藤さんに言われ、私達は食事処に連れられた

近藤さんと土方さんと沖田と共に席に座り、適当なものを注文してからボーッと町並みを眺める


「見てくだせェ天人でさァ」


沖田の言葉に私は思わず身を固めてしまうがそれを制するように近藤さんが私の手を掴んだ


「……花無為、気持ちは分かるが今は幕府の下に就いているんだ」

「……分かってます……すみません」


土方さんと沖田に聞かれないように近藤さんと会話して私はゆっくりと警戒を解いた

今だに天人を許す事が出来なくてどうするのだと自分を責める、いつまでも立ち止まっててはいけないのだ

そう自分の考えを改めた時丁度頼んでいた物が運ばれた、日本にはあまり似合わない洋食が目の前にはある

攘夷志士は天人に負けて完全に幕府は天人と合併した、負けてしまった侍はそれを受け入れて生活するか反発して生活するかの二択になった、その後者を私達は取り締まるのだ

少し悲観的すぎる考えを改めるように私は食事を口に含んだ、熱くて涙目になったのは言うまでもない
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