白銀花が咲く夢を見る

□真選組上京
3ページ/5ページ



私の怪我の容態は結構な重症だったらしく、船から飛び降りたせいか全身打撲とお馴染みの折れた足で全治数ヶ月と言われた

まだ若いのが救いだったがあまり無茶はしてはいけないと道場についている医者に言われ、私は少し反省する事にした

今になっては怪我も随分と治ってきて、ほぼ完治という状態になってきている、そんな私の部屋に近藤さんが訪ねてきた


「どうしました近藤さん?」

「いや、怪我も治ってきたし花無為の剣術の実力を見たくてな、少し時間いいか?」


襖を少しだけ開けながら近藤さんはそう聞いてきた、読んでいた本に栞を挟みながら机の上に置いて、私は立ち上がる

若干足が痺れてしまっていたが気にせず近藤さんの方を向く


「いいですよ」

「じゃあさっそく道場に来てくれ、もう相手は決まっているから花無為が来次第始めるからね」


近藤さんの言葉に承諾すると近藤さんは嬉しそうに目を大きくしてから説明をしたあと道場の方面に向かって行ってしまった

私はそんな近藤さんを見送った後、左足の包帯を取り替える、若干きつめに巻くと鈍痛がしたが骨がしっかり支えられた感じがした

伸びをしながら途中行き会った沖田と共に道場に向かう、ちなみに沖田はこの道場の門下生で土方さんより近藤さんとは長い付き合いらしい

まだ幼いが剣の腕は確かだと近藤さんから聞いた事があるので私としても気になる奴だ

道場に入ると土方さんが近藤さんと話をしていた、どうやら私の相手は土方さんのようだ

近藤さんは私に気が付くと竹刀と防具を片手に持って私の方まで早足で向かってきて、試合の応援と共にそれらを渡してきた


「じゃあ、トシよろしく頼む」

「あぁ」


土方さんにそう言う近藤さんの声を聞いて私は防具をつけながら土方さんの前に立つ、防具と言っても面とかは視界が極端に狭くなるので私はあまり好きではないのでつけないでいた

肩辺りについている紐を縛っていると、土方さんが私の面に気が付いたのか頭を指さしながら


「顔面、俺は容赦なく叩き込むぜ?」


と自信満々な表情で言ってきた、そんな土方さんの言葉に私は思わず鼻で笑いながら


「失礼ですが、顔面には一発も受けない自信があるんで」


と伝えたそんな私に土方さんは若干イラついたのか口元を少し痙攣させて笑った、そんな事をしている間に防具をつけ終えて、私は竹刀を構えた土方さんも続けざまに竹刀を構える

そんな私達を見て近藤さんは私達の間に手を出してから私の方を見た、本当に怪我が完治してないけどいいのかと聞いてきた近藤さんに私は笑いで返した

正直言って今の土方さん相手に万全でない状態で挑むのは難しそうだが、それでもここで引いたら格好がつかない方が嫌なので少しぐらいは我慢をする


「よし……始め!!」


私達が構えを取ったのを確認するとそう叫んだ近藤さん、それと同時に土方さんはこちらに向かって走ってきた

なかなかのスピードで繰り出された土方さんの竹刀を自分の竹刀で弾き、一旦距離を取ってから土方さんに向かって駆け出す、しかし私の竹刀も防がれてしまった

竹刀と竹刀がぶつかる音が響く中、私は必死に土方さんの隙を伺った、狙うは胴しかない顔面を狙ったらあとで何を言われるのか分かったものではない


「花無為……まさかテメェ……顔面狙ってんじゃねぇよな?」

「……」

「何か答えろよ!!」

「すぐに分かりますよ土方さん!!」


土方さんの言葉に私はあえて答えずは一気に間合いを詰めた、勿論顔面ではなく胴に隙が出来たからだ

明らかに顔面を守ろうと動いている土方さんの横っ腹目掛けて私は竹刀を振った、しかし竹刀が当たるより速く土方さんはあげかけていた腕を降ろし始めていた


「チッ!!テメッ!!」


土方さんは防ごうとしたが私はそのまま腕をより一層強く振ったので土方さんの胴に竹刀を当てる事ができた

速く竹刀を動かしたためか一際大きな音を立てて土方さんの胴に当たった、竹刀を離さないようにして間合いを詰めた時の勢いを殺そうとしたが、なにせ左足も完治してないので細心の注意を払ったが綺麗に捻ってしまった

ゴキンッと治りきっていた骨から嫌な音が響き、その直後私は反射的に足首を押さえていた、押さえても痛いものは痛く激痛は治まりそうにない


「だあああぁぁああ!?」


女としてはあるまじき叫び声を上げて、私はその場でのたうち回った、目からは勝手にボロボロと涙が溢れそのうち私は叫ぶのもやめてただ涙を流していた


「花無為ィィ!?」


近藤さんは叫ぶのをやめた私を心配するように駆け寄ってきてくれたが、私は放心状態で近藤さんの言葉を聞き流す事しか出来なかった

足の事を心配そうに話しながら動きやすいよう防具まで外してくれた近藤さんは励ますように私にさっきの試合の事を話していた


「着地は失敗したけどトシに一撃当てるなんて凄いぞ!!花無為は中々素質があるんだな」


放心状態でも近藤さんのその言葉はストンと耳に入ってきて私はボーッとする頭の中で安心した

どうやらこの人達と一緒にいてもいいようだ、これでようやく安心して夜寝る事が出来る

安心しきってしまったのかそう思った直後私は意識を手放してしまったようだ、結果反省したくせにより左足を悪化させてしまい医者に怒られてしまったのは沖田には馬鹿にされるので秘密にしておく
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ