短編

□太陽の笑顔
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「ナナコー!!」

「うわっ!?」



意気込んだ矢先、真横の甲板の縁に文字通りぎゅんっと手が伸びてきて、ルフィがこれまた文字通り飛んできた。
びっくりして思わずその場から飛びのくと、ルフィはそれを気にした様子もなくにししっと笑いながらこちらに手を差し出してきた。



「え、あの…どうしたのルフィ。」



突然のことに訳が分からず首を傾げると、あれ?違うのか?とルフィまで首を傾げてきた。
いや、だからどうしたのって聞いてるんだけど。



「だってよー、ナミがさっき“ナナコが誕生日プレゼント用意してる”って言って来たからよー。くれんじゃねぇのか?」



……私の意気込みは無意味だったらしい。
ちぇーっとむすくれてしまったルフィに苦笑いしながら、視線をずらすと、ナミとばっちり目が合った。

あ、ウィンクされた。

どうやら私がプレゼントを渡せるよう計らってくれたらしい。
ナミは男性陣を殴ったりとちょっと怖いけど、優しいから、私のために機会を作ってくれたのだ。
嬉しいけど、自分からということが達成できなかったのが少し残念だ。
とはいえ、正直ウソップやフランキーが一緒にいる中に声をかけに行くのは難しかっただろうから、助かった。




「ねぇルフィ、私ちゃんとプレゼント用意してるよ。」

「!ほんとか!?」




言えばむすくれた表情からすぐにキラキラとした目線を向けてきた。
本当にまぶしくて、なんだかむずむずする。



「はいっ、これ。」



早く早くとせかすような視線が送ってきているのがわかって、慌ててリボン付きの筒を差し出す。
それがすぐさまルフィの手に渡って、プレゼントを渡せたことに私はほっと息をついた。
ぜひとも後で見た感想を…



「なんだなんだ?なぁ、開けていいか?」



あとで……。



「……うん、いいよ。」



無理だ。
期待に満ち溢れた満面の笑みに、私は負けた。
寧ろこれに勝てる人がいたらすごいと思う。

目の前で開けられるプレゼント。
今さらながらものすごく恥ずかしい!
気に入ってもらえなかったらどうしよう…!
思わずうつむいてしまう。




「すっっげぇーーー!!!!」



上がった歓喜の声に、ルフィの足元に向けていた視線を上げる。
そこにはやっぱりキラキラした表情をしている彼がいて胸がぎゅうっとした。



「にししっ、ナナコはこの船の最高の画家だなっ!」

「あっ、ありがと…!!」



褒められたことが嬉しくて、顔に熱が集まるのがわかる。

私の送った絵。
それはサニー号の芝生の上で輪になって寝転がる、この船のクルーたちの絵。

あぁそうだ、ちゃんと、ちゃんとこれは私の口から伝えないと。



「ルフィ、誕生日おめでとう。あなたに会えて本当に良かった。私、来年のルフィの誕生日には恐怖症克服して…そ、それでえっと…い、一緒に昼寝とか、できるようになってみせるから…!」

「おう!楽しみにしてる!」




たどたどしい言葉になってしまったけど、何とかお祝いの言葉を伝える。

太陽みたいにあったかい笑顔が向けられて、それにつられて私も笑った。



あぁ、きっと来年は、もう大丈夫だ。

何故だかそう確信した。







END
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