小説
□雪原の皇子
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俺が起きるとバスはすぐ次の目的地へ向かって走り出した。
今回は隣に風丸が居ないので二度寝でもしようかと思った時、前の席の土門が声を掛けてきた。手招きされたので席を移動する。
土門「よう」
アクト「ん、あぁ…」
何か気まずい雰囲気だな。昨日の発言はマズかったか。
土門「…なぁ虚埜。お前が抱えてるのってそんな重たい事情なのか?」
先に口を開いたのは土門だった。やはり昨日の事が気になっていたのか、おずおずとそう聞いてきた。
アクト「…別にそんな大した事じゃねぇよ。」
よくある事だし普通の事だ。
土門「そうか……染岡はあぁ見えて結構イイヤツなんだぜ?」
アクト「わーってるよ」
悪いヤツじゃ無い事くらいな。寧ろ俺に対する態度は染岡くらいで間違って無い筈だ。
土門「そうか…あ、生姜焼きってお前が作ったんだろ?」
アクト「ん?何で」
土門「夏未は料理下手だからな」
そう言って土門は笑う。俺もそうかと言って認めた。土門なら誰にも言わないだろう。
アクト「んじゃ、俺はもう一眠りするわ」
土門「おう、…何かあったら言えよ?」
心配してくれてるのか、土門は俺にそう言った。
土門は、体細くて、気さくで、頭良くて、優しい。
俺は適当に返事をして土門の後ろの席に戻り、一つ欠伸をして目を閉じた。