黒と白

□"つける"か"かける"か。
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分厚い雲が月を覆う一月のよる、空は今にも泣きだしそうな緊張感を漂わせていた、それはここ、
塔矢邸も同じである、塔矢アキラと塔矢行洋の間に緊張が走る。

「父さん、これだけは絶対に譲れません、これは”かける”べきです」

「いや、アキラ”つける”べきだ」

アキラが、心酔し尊敬する父にはむかったことなんて無かった、が今回は譲れないものがあるらしく、父で師匠である塔矢行洋に反対したのだ。

「いいえ”つける”べきです」

「いや、私は譲らない」

しかし、塔矢行洋も譲らないものがあるらしく、二人の話は進まない、もう何度も”かける”か”つける”かで言い合いをしていた。

「そうですか、分かりました。父さん貴方が譲らないというのなら、僕にも考えがあります」

「譲らないな」

父の一言が引き金になったのか塔矢は立ち上がると、玄関に向かって歩ききだした。

「父さんが、”つける”だと言ってくれるまで僕は家を出ます」

アキラが言い切った後、玄関のガラス越しに外がピカッと光ったそして、ザアーと大きな音を立ててバケツをひっくり返したような雨が降り始めた、アキラはそれに構わず傘をさすと暗い夜道へ消えて行った。
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