BITE ME!!

□第二話:娼婦失踪事件A
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その時。

遠くの方から犬の遠吠えがかすかに聞こえた。

私のそばにいる犬達はすぐさまその方向を睨む。

私もその方向を一緒に見た。

そして、ジュリオも。


「何か見つけた、みたいね」


私は手に持っていたアイスをその辺にいた浮浪児に渡すと、ジュリオにも目配しを送り犬を連れて駆け出した。

表通りを過ぎ、路地裏に入るといくつかのブロックも過ぎると声の主が待っていた。

彼のいる位置から前方約10m。

その建物の中では昼間だというのに酒盛りをしているのか、やたら騒がしい。

そのお陰で犬の遠吠えは聞こえずにすんだようで、外に人が出て来る様子は皆無だ。


「お前、ここからこの匂いがするのね」


知らせてくれた犬に、娼婦さんのハンカチを見せる。

彼はハンカチの匂いを嗅ぐと、あの建物を見つめた。

娼婦さん達はあそこ、か。

私も同じ建物に視線を送る。


「ん。わかったわ。いい子ね」


忠実に仕事をこなした彼の頭を撫でた。

同時に、他の犬達も集めるために犬笛を吹く。

突入するためだ。

まぁあの子達の脚なら1分もあれば全員集まるでしょう。

後ろに振り向き、ジュリオにも声を掛ける。


「ジュリオ。ここにたぶん娼婦さん達がいる。生きてるのかどうかは分かんないけど」

「どうするんだ?」

「今、今回一緒に連れてきた犬達を全員呼んだから、集まり次第正面から突入する」

「それは、大丈夫なのか?」

「もっちろん!私の犬達は最高よ?あんな建物、制圧するのなんてわけない」

「・・・俺は、今日は敵を殺せない?」

「んーそうだねぇ、すぐに終わるからジュリオの出る幕はないかも」

「そうか・・・」


残念そうにうつむく。

丁度頃合で犬達がこちらへ駆けつけて来た。


「よし、じゃあ行こう!」


犬達に指示を下し、建物へ堂々と正面から乗り込む。


「どーもこんにちはー!あなた達娼婦さんを何人かここに拉致ってませんかー?」


当然、室内の人間の視線が一斉にこちらに向いた。


「な!?CR:5か!?」

「なんでここが?!」

「ハーイビンゴッ。そんじゃ――」


ピィィィィィ!!


犬笛を強く吹く。
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