ハピツリ短編
□疲れました。
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「エリザ、フリッピーくんだよ」
『んぁ、わかった』
最近、フリッピーは裏表の入れ替わりが激しい。
前回も前々回もそのまた前も、フリッピーは血塗れで大怪我を負って運ばれてきた。
何で英雄が寄りによってフリーターであるあたしの家に搬送したのかというと、
・当てにならない病院
・当てになる一般人
天秤にかけると、当てになる一般人を誰しも選ぶわけである。
(※病院の先生=ランピー)
まあ自分を当てになると言うのはどうかと思うが。
『あーあー…。まーた激しくやらかしちゃったっすねぇ』
フリッピーは何も言わない。ただ俯いている。頬に負った傷は痛々しくて、消毒液がしみる筈なのに運とも寸とも言わない。
『しみてるだろうけど、ガーゼ貼るっすよ』
また殺して、英雄と喧嘩して大怪我負ったんだろうか。
あの青色野郎は手加減ができないんですかねぇっ!?
A:CAN NOT(することができない)
まあ、そんな自問自答は置いといて。あたしはガーゼとテープを探すため棚を漁り始めた。
『最近毎日怪我するけど大丈夫っすか?』
「……………」
『そう言えば、チョコチップクッキーあるっすよ。後で食べる?』
「……………」
見事なほどの言葉のキャッチボールならぬドッジボール(一方通行)っすね…。
まあ、そんな気分じゃないか。
『お、あったあった』
「───────エリザ」
未だに何も言うこともしなければ動きもしないフリッピーの頬にガーゼを貼ろうとすると、フリッピーは突然呟いた。
『ん?』
「もう、疲れたよ」
弱々しく、泣きそうな声だった。
顔を上げたフリッピーは、今にも泣き出しそうだった。
目尻に涙が溜まってるわけでもないのに、何でか泣き出しそうだった。
『そっかぁ…』
適当に流すことはできなかった。
戦闘神経症なんて厄介な心の病気抱えてて、死ねば楽になれる…かもしれないけど、この町では死ねないし。
これほど辛いものってあるものなのかな。
ガーゼを貼ったあと、
破裂音にならない程度にビンタした。
キョトンとした顔のフリッピー。
頬をおさえてます…て乙女か!
『私は、渇を、入れました、まる。』
あれ、作文?
『フリッピーは、少し心身ともに疲れてるだけです。だから、私の元気パワーを、分けてあげました、まる。』
フリッピーは、ははは、と少しだけ笑ってみせた。
「少し元気出たよ、ありがとうエリザ」
『よかったっす』
つられて、あたしも頬が緩んじゃった。
疲れました。
(君といると、少し元気になれる気がします。)