Shortdrema(ネタ)
□やっぱり俺には君しか考えられない
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自分の目の前の光景を疑う。
これが夢であってほしい。
……いや、夢でないと俺が困るのだから。
「これなんか、どうだ?」
「えーっ、もっとかっこいいものの方が……」
「るっせぇなぁ。じゃあ自分で選べよ」
「すいませーんっ」
バッティンググローブを買いにやって来たここらへんで一番大きいショッピングモールの3階で俺は彼女を発見した。
1人でぶらぶらと歩いている杏咲。
普段部活が忙しくて一緒になんて行けないからたまに1人で買い物行くって言ってたけど。
まさか今日会うとは思わなかった。
……でも、杏咲の様子がどこかいつもと違った。
まるで誰かを待っているような。
男の勘と言ったら笑われるかもしれないが、俺にはそう思えた。
そして案の定俺の彼女と一緒に買い物に来ていたやつは同じチームメイトの純だった。
あぁそうか。
昨日純にバッテ選ぶの手伝ってって言ったけど、珍しく断られたんだっけ。
それは杏咲と買い物に来るためだったんだ。
疑っていた感情が確信へと変わる。
一番最悪な状態へと物事は変わっていく。
どんなに嫌な事があっても笑顔で隠して周りの皆から慕われている、素直で可愛い君を俺は好きだったのに。
君の目はもう別なやつを向いていたのか。
気が付くと買おうとしていた商品を置いて俺は店を去っていた。
……
「亮介さん!」
俺に向かって手をぱたぱたと振る杏咲の姿が見えた。
いつもなら“目立つからやめろ”だの“相変わらずバカだね”だの毒の1つも吐いてるところだが今の俺には正直どうでもいい。
片手をひらっと上げただけで自分の教室への階段を上った。
嗚呼、何で人には余計な感情がまとわり付くのだろうか。
個人的な感情に縛られて、また今日も自問自答を繰り返す毎日だ。
あっという間の一日だった。
今日は杏咲とも純とも話さなかった。
口を利けば何か言われるのが怖かった。
そうしたらもう俺の存在価値なんてなくなってしまうと思うから。
「亮介さん、あの」
そう言って練習終わりの俺に君がくれたもの。
可愛らしいピンクのガーゼで梱包され、上部には“HAPPYBIRTHDAY”の文字があった。
「……何、これ」
忘れてたんですか、杏咲はいつもと変わらぬ笑顔で俺の前に立つ。
「亮介さんに似合うようにと思って。
純さんに選んでもらいました」
その言葉で思い出す。
今日は、――俺の誕生日だ。
「本当は一緒に選んだ方がいいと思うんですけどサプライズにしたくて……。純さんなら亮介さんの好きなものわかると思ったから」
気に入ってもらえたみたいですね。
そう言う君に
「生意気だよ」
と返す俺。
でも本当は伝えたいのはそんなことじゃない。
疑った自分が情けない。
俺の彼女はこんなにも真っ直ぐに俺を見ていてくれてたじゃないか。
「まぁありがたくもらっとくよ」
俺の手は自然と君の背中へと回った――。
やっぱり俺には君しか考えられない
(素直じゃない俺でごめんね)
初めてのオチナシ!
オチ作ったら駄目になると思いましたw
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