Shortdrema(ネタ)
□流れ続ける水は絶対に。
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自分が嫌だ。
あまりにも情けなくて、自分が嫌だ。
今日は部活の大会だった。
新チームになって初めての公式戦。
3回戦敗退。
その中の大きな敗因は私の判断ミスから生まれた消すことのできない試合を決定づけるもの。
新チームを引っ張って行かなきゃいけない立場なのに、見本となるプレーをしなきゃいけないのに。
出ること出ることが裏目になる。
「はっ………んっ…………」
こんな自分を変えたい。
部活の主将としてチームを引っ張っていくと決めたときから自分に課しているノルマ。
やり過ぎても効果はないってわかってるけど、負けた日は悔しさから量を倍にしてしまう。
「やりすぎだ」
これでもう何週目だろう、という頃。
走っていたグラウンドの野球部のベンチ近くに自分以外の人間がいることに気づいた。
「もうそろそろあがったらいんじゃないか」
結城哲也。
声をかけてきたのは同じクラスだが、あまりよく話したことのない相手だった。
「結城……君」
「さっきから何周もしてるだろう? いい加減きりあげたらどうだ、七瀬」
結城君が自分の名前を知っていたことにびっくりする。
同じクラスだといっても、1回も席が近くなったことはないし、話したといっても1、2回くらいだろうか。
だとしてもこっちは結城君の名前くらい知っている。
うちの高校の野球部は強豪だ。
個性的なメンバーをプレーで引っ張っていく頼れる主将、結城哲也。
それが私から見ての結城君の評価であって、周りから見ての結城君だった。
私が目指してる主将像というものが結城君そのものというわけではないが、明からに野球部のメンバーからは一目置かれている。
「どう、やったら……変われるの、か、な」
気づいたら吐き出すようにして、結城君に質問を投げかけていた。
結城君の表情が驚いた表情に変わる。
「何で俺にそんなことを聞くんだ?」
「頼れる人を見ていくんじゃなくて、頼れる人になりたいから」
実際に君がそうなんでしょ?
「大丈夫だ」
不意にきた一方的な肯定の言葉に驚く。
だいじょうぶ?
大丈夫?
何が?
「自分が理想とするものに近づくために努力を惜しまない。その姿勢があればなんだって出来る」
そして。
「流れ続ける水は絶対に腐らない」
そう言い残して結城君はバットを片手に帰って行った。
結局、結城君も1人で自主練をしていたんだ。
きっと強豪野球部の主将を務めるプレッシャーの比は私以上だと思う。
理想に近づくために努力を惜しまない。
その言葉に引っ張っていく立場の人間を理想を見れた気がする。
――なんだかちょっとだけ心が軽くなった気がした。
流れ続ける水は絶対に。
「結城君、昨日最後に言った“流れ続ける水は絶対に腐らない”って教室のカレンダーに書いてあった言葉でしょ」
「…………」
「背中で語る、って感じでかっこよかったけどばれてるから」
「……む」
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哲さーん、オチは受け売りだったってことで。
いや、実際これ家のカレンダーに書いててぴーんと来ました((、
ちょっともう少し2人の仲が進展した続編書いてみたいです(∀)!
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