book-Rs〈過去作品〉
□わからない心-8
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「ん…」
「グレイ様!体調は如何ですか?」
「ジュビア…?俺は…」
「熱があるようです。何か、食べたいものはありませんか?」
「…いや、特には…ってか、食欲ない」
「ふふ、そう仰ると思っておりました。アイスとゼリー、作ったんです。それくらいなら召し上がって頂けるかと…」
「ありがとう、ジュビア…」
「ごめんなさい、勝手に冷蔵庫とキッチン…お借りしてしまいました」
「いいんだ、わざわざ悪いな」
盆にのせられたアイスクリーム、ひんやりし ていて火照った体には有り難く、口の中で広がる優しい甘さが嬉しくて…
「もしかして、一晩中傍に居てくれたのか?」
「はい、放っておけませんから」
「ジュビア…ごめんな…」
「謝ってばっかりですね、グレイ様はゆっくり休んでください」
そういって微笑む彼女の顔は、母性を感じる。
1度帰って支度をしてきたと言う彼女は、髪をアップでまとめていつもよりは薄手で白に水色のリボンのついたシフォンワンピースだった。
その姿を、素直に可愛いと思ってしまう。
「ジュビア…俺は…いつも逃げていた」
自分でも驚くほどに声が震えていた。
「お前の気持ちに気づいていたのに、その気持ちを見て見ぬふりをして甘えていた」
「…グレイ様…」
「お前を失って、初めて気づいたんだ。」
俺は…
ジュビアが好きだ。
「っ…グレイ様…」
「俺は、リオンなんかよりもお前のことを思ってる」
「グレイ様の…馬鹿………」
涙を流す彼女を、そっと抱き寄せた。
彼女の肌は、とても冷たくてすべすべしていて気持ちよかった。
ただ、俺の胸に埋められた顔だけはとても熱を帯びていた。