book-Rs〈過去作品〉
□わからない心-6
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何がどうして、涙が出たのかわからない。
俺は何も、わからない。
あのとき…リオンがジュビアにリングを送ったときのもやもやした自分の気持ちも、リオンがジュビアを抱き締めたときに沸いてきた醜いこの締め付けるような思いも、キスを待つジュビアの真っ赤になって照れた表情にえぐられた心…これは…まるで…
「ジュビア…」
「グレイ様?大丈夫ですか?どうぞ、これを…」
「ありがとうな…」
差し出されたハンカチから、ジュビアの匂いがした。たった数日、近くに居なかっただけなのにそれが妙に懐かしく感じてしまう自分がいた。
「リオン様、今日はとても楽しかったです!また…誘ってくださいね」
「あぁ、勿論だ。今日はありがとう」
「グレイ様が心配なので、送ってくださらなくても結構ですよ?」
「こんな馬鹿弟弟子、放っておいても構わんのだが…そんな優しいところも素敵だ。また伺おう。」
「リオン様ったら///では、ごきげんよう」
「グレイ様、帰りましょう?」
いつもと変わらない口調、服装、髪型…ただひとつ違うのは…俺に向けられる眼差し。
いつもならキラキラした笑顔で嬉しそうに駆け寄ってくるのに、今日は微妙な距離を感じる。
「ジュビア… 」
「はい?」
「お前は、リオンが…」
好きなのか?
はい、と頷く彼女を見て心が壊れていく気がした。やっと、俺は気づくことができた。
失ってはじめて気づく、本当の気持ち。
「グレイ様、ジュビアはグレイ様が好きでした。初めて見た青空はこの世界の何よりも美しかったです」
俺の少し前を歩くジュビアは、空の色をしていた。艶やかで、美しくて、風に揺れる空。
手伸ばせばと届くのに…何よりも遠い。
「ジュビアは、報われなくても良いんです。グレイ様が幸せなら。リオン様からおまじないのことは聞いています。」
「!?………自分がまじないにかかっていることをわかっていて、リオンを選んだのか!」
「っ…ジュビアは…………」
「お前は!どうしたいんだ!?お前の…幸せはなんだ?」
びくり、ジュビアの体が跳ねる。
こんな風に当たりたいわけじゃないのに、口が勝手に動く。
リオンみたいに、優しく接してやりたいのに。
全部、もとはといえば俺が悪いのに…