book-Rs〈過去作品〉

□わからない心-4
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「リオン様ー!早くいらっしゃってください!」



リオンは目の前にいる水色の髪を緩く巻いた、愛しい人に呼ばれ駆け寄る。
目の前に広がるのは海、彼女によく似合う美しい広大な大海。



「ジュビア、幸せです」



にっこりと微笑みながらそう言う彼女に愛しさが込み上げ、そっと彼女の手をとった。



「これは、昨日帰りに寄った店で買ったものだ。安物だが、受け取ってくれるか?」



「素敵…///」



ジュビアに似合うと思って先日購入したシルバーにアクアマリンが埋め込まれたシンプルな指輪を手渡すと、ジュビアはほほを染めてありがとうございますと涙混じりの声で囁いた。



「指輪を貸してくれないか?」



再び受け取った指輪を取りだし、そっとジュビアの左手の薬指にはめてやる。
ジュビアは恥ずかしそうに俯きながらも、リオンと目をあわせて微笑んでいた。
二人の間には、とても親密で特別な時間が流れていた。






「………」



「…グレイ、あれで本当によかったのかい?」



ジュビアとリオンが出掛けていってから、二人を探し回りその様子を物陰からこっそり伺っていたグレイとロキ。



「それが、あいつにとっての幸せなら…俺に割って入っていく権利はないだろ?」



…ジュビアにかけられたまじないとは



『自分を一番想い、幸せにしてくれる人を好きになる』
というものだった。



「グレイ…こんなときくらいは素直になったらどうなんだい?効き目は3日間だよ、このままじゃ本当にジュビアは…」


リオンを好きになってしまうかも知れない。


そんなことわかってる。ジュビアのあんな幸せそうな顔を見るのははじめてだった。
ジュビアをリオンの魔の手から救ってやらなければと思うのに、二人を引き裂く行為そのものが悪いことのように思えてしまう。
二人はあのままでいるのが、一番幸せなんじゃないのか?と。ジュビアが一番幸せになれる相手が…



リオンなのだから。

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