大宮BL小説BOX

□tactics 【ON】
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「大ちゃん、さっき姉ちゃんにフラれたんだよね。
 姉ちゃんと別れたら、大ちゃんもう来ないでしょ?
 だとしたら、もう会えないと思って…」


「そう思ったら、いても立ってもいられなくなって…
 本当にごめんなさい」


耳まで真っ赤にして、瞳を潤ませながら話す和に
なぜか心がざわついた。


ドクンドクンと心臓の音がやけにうるさく聞こえてくる。


おいら…どうしちまったんだよ……



「気持ち悪いとかねぇけど…お前ホモだったのか?」


「そんなのわかんないよ。
 でも、女の子とデートしたこととかあるけど、
 こんなにドキドキする人は大ちゃんだけだから…」


男を可愛いと思うなんて…


和のことはずっと弟のように思っていたし、
おいら今、失恋したばっかだからだよな…


「忘れて……聞かなかったことにして…」


和は再びおいらに背を向けた。



『じゃあな』


そう言ってこの部屋を出ればいいだけ、
それだけのことなのに…


自分でも正直驚いている。


でもおいらは和の華奢な体を後ろから抱き締めていた。


「ごめん。俺よく分かんねぇよ。
 今まで、可愛い弟みたいにしか思ってなかったし…
 急にそんな風に言われても…」


「うん、分かってる。
 だからもういいから…」


おいらの手を振りほどこうとする和の手を
強く握り締めてしまった。


その手に温かい雫がポタポタと降ってくる。


「その気がないなら、変な期待させんなよ」


すり抜けるようにおいらから離れた和は
真っ赤に目を潤ませて、弱々しくおいらを睨んだ。





「ごめん…」


今度こそ部屋を出ようとしたその時、
「待って…」とおいらを引き止め
駆け寄ってきた和に丸っこい手を頬に添えられる。


目を閉じておいらに近付く和に
『キスされる…』
そう思った瞬間


「気が変わったら…連絡して」


携帯の番号とメアドが書かれた青いカードを
和はおいらの手に握らせた。


「お、おう。じゃあな…」


部屋を出るその瞬間、
和がニヤリと不敵な笑みを漏らしていたなんて、
おいらは知る由もなかった。



そして自分に起こったことが全く整理出来ないまま、
おいらは二宮家を後にした。
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