大宮BL小説BOX

□5色の虹 【ON】
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そして僕らは芝生に寝転んでいた。


天気が良くっても、もうすぐ12月。

風が吹き抜けると、ブルッと身震いするほど寒かった。


でも、繋がれた左手はじんわり汗ばむほどに、

いつまでもポカポカ温かかった。


こんな風に過ごすのは初めてで、

僕の心臓はずっとせわしなく動いている。



今日は特別な日だから…

智もそれを知っている。


「智…」


「うん?」


「お誕生日おめでとう」


「ありがと」


智はいつものように、

僕が大好きな顔で微笑んでくれた…



しばらくしたら智が唐突に


「和は将来何になんの?」


なんて聞いてきた。


「まだ中1だよ。そんなの分かんないよ。智は?」


「おいら絵本作家になりたいかも」


「かも、って…」


智がそんな夢を持ってたなんて、全然知らなかった。


「なぁ、かずぅ〜、あの虹何色に見える?」


「そんなの7色に決まってんじゃん」


「そっかなぁ〜、おいらには5色にしか見えねぇ」


「だからアンタの描く虹は5色だったんだ!!」



おいらのたんないとこは和が補うの。


だからおいらが絵を描くから、和が話作って。


それって僕の方が大変じゃない?


うふふ…



空が夕焼けに染まって虹が見えなくなるまで、

僕らは他愛のない話をずっとしていた。


辺りが暗くなる前に、僕らは背中を向けて帰って行く。


僕らの家は反対方向だから、

ここで会って、ここで別れる。


次の日もまた次の日も、僕らは変わらぬ時間を過ごした。


人通りの多いこの場所で、僕は架空の世界と戦い

智は目で見ることが出来る世界を描いていた。


あの日のことは幻であったかのように、

手を繋ぐこともなく、キスをすることもなく、

ただ同じ時を寄り添って過ごしてた。


これが僕らの日常、僕らの日課。


でも季節が移り変わるように、

僕らの日常が変わる日も、刻一刻と迫っていた。
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