大宮BL小説BOX

□5色の虹 【ON】
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芝生の上にうつ伏せに寝そべって、

さっき本屋で買ってしまった1冊の絵本を広げる。


“コンクール優秀賞”と書かれた帯の付いた絵本。

タイトルは【5色の虹】


この年で絵本なんてって思った。

しかも千円オーバーは学生には痛過ぎる出費。


漫画2冊余裕で買えるじゃん!!


何度も棚に戻して帰ろうとしたけど、

後ろ髪を引かれて、結局購入してしまった。




絵本の内容は…


小さな女の子が虹を見て、7つも色が見えないと言う。


それをお父さんが

「目に見えるものが全てじゃないんだよ」

「見えないものこそ、大切な物があるんだよ」って

人の温もり・優しさ・大切な思い出…


一つ一つ諭すように教えてあげる、優しい話だった。




『お揃いで何か持ってようか』


『物なんて入りません。僕には思い出があるから。

形あるものなんて失ってしまうかもしれない。

思い出は無くさない。

僕の心の中に、生涯仕舞っておけるから』


それは智と最後に会った時の会話…




「なんだよ、この本…。なんなんだよ…」


クレヨンで描かれたような、温もりのある絵だった。


クレヨンなんて使ってるのは見たことないけど、

ずっと隣で見てきた智の絵に違いなかった。




「やっぱ、和なら見つけてくれると思った」


振り返ると見違えるほど小麦色に日焼けした智が

ふにゃんって笑って立っていた。


「アンタの学校って、野外でばっか絵描くのかよ」


「ちげぇ〜よ。釣りにハマった」


「なんだよ、それ」


久しぶりなのに流れる空気感が何も変わってなくて、

僕らは顔を見合わせて笑った。


ホントに久しぶりに笑った。


それから2人で寝転んで空を見上げたら、

遠くの方に虹が出ていた。


「やっぱ虹は5色だな」


「これって盗作じゃないですか」


僕は絵本を智に突き付けた。


「どうして?」


「これって、僕の言ったことばかり…」


「だから言ったろ?話は考えてって。

これからも一緒にやってこな。

来年には戻って来るし。きょーどーさぎょーしよ♪」



僕の3度目のキスは…

春の暖かな味がしたような気がした…





絵本の帯に隠れていた表紙の下の方に

ぶん:にのみやかずなり/え:おおのさとし

と書いてあった…
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