大宮BL小説BOX

□5色の虹 【ON】
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まだ寒さ残る3月初旬、

いつもはふにゃんって笑う智が、

とても暗い顔をしていた。


風のうわさは知っていた。

だけど僕は怖くて聞けなかった。


「和……

おいら全寮制の学校…行くことになった」


「ふ〜ん、そっか…

合格したんだね。おめでと…」


ちゃんと智の顔を見たいけど、

悲しませたくないから振り向けない。


智は僕を抱き寄せると


「ごめん」


と掠れた声でつぶやいた…


泣いてる!!


僕はビックリして顔を上げ


「どうして、どうしてあやまるの?!」


っと問うと、智は眉をハの字にして


「ごめん」


って、もう一度つぶやいた。



それからどれぐらい経っただろう…

きっと大した時間じゃなかったと思う。


でも僕の涙が全然止まらなくて、

僕の頬の雫を智の繊細な指が何度も拭ってくれる。


今、智はどんな顔をしているの??


涙で霞む目で見上げたら、

さっきと同じ目をした智の顔がぼんやりと見えた。


僕がそっと目を閉じると、智の手に両頬を包まれて、

僕の唇に智のそれがそっと重なった…


僕の2度目のキスはとてもしょっぱい味がした…





智が実家を出る日、僕は見送りに行かなかった。

行けなかった…


泣き腫らした酷い顔を、僕は智に見せたくはなかった…





あれから2年、智は年に数回帰って来てるって、

近所のおばさん達がうわさしてるのを聞いたりしたけど、

僕は会いに行かなかった。


また別れる日が怖かった。


僕もあと数日で高校生。

もう新しい仲間を見つけて、前に進まないと…



分かってる、分かってるのに…

僕の心の中は、智への愛で溢れていた。
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