04/06の日記

11:31
四畳半ラブストーリー(ジロ跡)
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「お前またこんなところに住んだのか」
「こんなところって、私大生は貧乏なんだC」
都心のはずれの1Kを借りられたことさえ、芥川はラッキーなことだと思っていた。家が決して裕福なわけでもなく、無理を言ってひとり暮らしをさせてもらえて、尚且つこんな大学の近場に物件を借りられたのだから。
それなのに跡部はそのスバラシサをちっとも分かってくれない。
まぁ、跡部だからで片してしまえばそれまでなのだが。
「金に困っているならうちに住めばいい」
「A-,そんなヒモみたいなの嫌だC」
今だってそんな変わんねぇだろ、と跡部は呟いた。
「それに俺、まだ跡部から返事聞いてないC」
ピクッと跡部の指が動いた。視線は畳の目から離れない。
「ねぇ跡部。跡部は好きでもない人とキスやあんなことまで出来るサノバビッチさんなの?」
「サ・・・、んなわけねぇだろ!」
顎にかけようとした手がバチっと振り払われた。そしてあ、という跡部の躊躇いが見られた。その隙を芥川は見逃さない。
「跡部は何を気にしてるの?」
「・・・俺は慈郎を幸せにはできない」
珍しく跡部は視線をずらして問に答えた。
「幸せって、なに」
「お前とは一緒になれねぇんだ」
あぁ、あと芥川は漏らした。跡部が下唇を苦々しげに噛んでいるのに気づいたのだ。そして、もうひとつ気づいた。
「ねぇ跡部。俺は別に1度だって跡部に結婚してとか、内縁の夫になりたいだとか言ってないよ。俺は跡部を待ってる。」
初めて跡部は芥川の瞳を見た。そして何を言っているのか分からないという顔を向けた。ので、芥川はいつもの笑顔でこう応えた。
「俺、跡部をずーーっと待ってるよ。跡部に奥さんができて、子供も生まれて、海外から半年ぐらい帰ってこなくてもこういう狭いところでずっと待ってる。
俺はきっと、跡部と男同士でも婚姻を結べるほどの男にはなれないから」
跡部のアイスブルーの瞳が揺れた。ポタポタと畳の上に雫が垂れる。
「それじゃお前の人生はどうなる」
「もちろん、俺も仕事をするし友達とも遊ぶだろうからそれなりに幸せな人生を送るC」
「駄目だ!そんなの俺様が許さねぇ!」
途端、跡部の体を引き寄せた。自然に自分の体がそうしたのだ。四畳半の狭い天井に視界が吸い寄せられる。跡部よりも少しだけ小さい自分の体の上に体をかぶせた。
「こんなに狭い部屋なら2人で充分だC」
「もう1人は俺様じゃなくてもいいだろ」
「なに、そんなこと言うの?じゃあ俺一生独り身かぁー、寂C」
「俺を待ってたってお前は寂しくなる」
「でも、跡部が帰ってくるなら俺待ってるよ」
ぎゅーっと芥川は跡部の体を抱きしめた。跡部を横目に見るとじっとこちらを見ていた。少し不安げな表情。なんだかとってもむしゃくしゃして
「あーーーーー!!!」
と大声を上げた。
「跡部はそんなことで不安にならなくてもEんだよ!俺が勝手にそうしてるだけなんだから!」
─ったく、悔C!
むちゅっと唇を跡部の頬にやる。と、跡部は更に目を丸くして顔を赤くした。そして小さく、馬鹿だなと囁いた。
「で、今跡部は嫌じゃなかったんでしょ?じゃあ俺のことすきなんじゃん!問題ないよね!」
今度はいつも以上に、にかぁと笑うと跡部も釣られて口元が緩んだように見えた。そして、また畳に雫を垂らした。

芥川はぎゅーっときつく抱きしめ返された。

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