愛してるに変わるまでは

□隆志さんの手紙
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「まひろー、こっち来いよ。懐かしいのが出てきたからさー、一緒に見ようぜ」

寝室のベッドサイドに屈み込み、ベッド下に入れ込んだままだった小さめの衣装ケースを引き出しながら叫ぶ俺を、ドアの前で警戒するように見ているのは恋人のまひろだ。

付き合い始めて、二ヶ月ほどになる。なんというのか、まあ、まひろはなかなか手強くて、いまだに俺のマンションへは抵抗なく来ても、寝室へは軽々しく入らない。

一度だけ酒に酔ったふりをして、介抱してくれるまひろをベッドに押し倒してみたことはあるけれど、あれがまずかったのだろう。俺の思いは未遂に終わり、まひろはますます警戒するようになった。

だから今も、ドアに手を添えて、戸惑うようにこちらを見ているだけだ。

仕方ない。今はそのつもりもないから、俺は衣装ケースの埃を払いつつ、それをリビングへと運んだ。

「何が入ってるんですか?」

「母さんの遺品」

「思い出の品ですか?」

衣装ケースの蓋を開ける俺の手をじっと見つめるまひろは、今でも俺に丁寧な言葉を使う。

もっと気さくに話しかけてくれたらいいのにと思うが、きっとまだそこまで愛されてないのだろう。

「そう。母さんは大事にしてるものをいつも桐の箱に入れててさ。葬式の後、よく見ずにそのままここに入れておいたの、最近思い出したんだ。まひろの写真とか出てこないかな」

「え、私の?」

「小さい頃の写真なんてないんだろう?」

「ないですけど…もし出てきたら、すぐに見せてくださいね。奏さんに見られるの、恥ずかしい気がします」

「まひろは変わらずかわいいよ。恥ずかしがることなんてないさ」
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