あしたの恋
□あしたの恋 第3章
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日菜詩ちゃんはほんのり頬を染めたまま俺の隣を歩く。歩くのはいつも左側だ。今日も日差しが強いのに、せっかくの日傘もささない。
一緒に帰ろうなんて言ったものの、かける言葉が見つからない。
彼女が俺に好意を持ってると知っていて、俺はまだその好意に答える結論を出してもいないのに唇に触れた。彼女は怒りはしなかったが、きっと傷ついただろう。
「ねぇ…」
校門を出たところで、思い切って声をかける。
「…なに?」
「今日は駅まで送るよ」
「いいの……?」
「いいよ。…あのさ……」
さっきはごめん。そう続けようとしたが、言葉にならなかった。謝ったりしたら、あれが遊びだったみたいに聞こえる気がして。
「なに…?」
日菜詩ちゃんは不安そうに俺を見つめる。それほど俺は苦しげな顔をしているのだろう。
「なんでさ、いつも日傘ささないの?」
迷った挙句、結局そんなことしか言えない。
「あ……、それは…、それはね、明日嘉くんの近くを歩きたかったから…」