短編

□だって好きですから!
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角を曲がったところで、あの方の後姿を見つけた。

途端に私はぱぁっと明るくなり、全速力で駆け出す。



だだだっ


『白龍様ー!ガンッ痛ぁ!?』

「・・・何をしているんだ、ルーシェ」


はぁ、と溜息をついたお姿を下から見上げる。

だって私はこけたから。派手に。

躓いたんじゃない、こけたんだ!


ああ、でも溜息をつく白龍様もかっこいいです!素敵!


『白龍様がおられたのでつい・・・』

「つい、で毎回こける姿を見る俺の気持ちにもなってくれないか」


想像。

・・・ああ、確かに心臓に悪いですね。


『善処します』

「あまり直す気は無さそうだな」


白龍様ったら苦笑も素敵!


未だこけていた私に白龍様が手を差し伸べて下さる。

申し訳ないと思いつつもご厚意に甘えさせていただく。


『(わ、白龍様の手、あったかい)』


当たり前だけど、白龍様の手は温かかった。
槍の鍛錬も毎日欠かさずやっておられるせいか、まめが出来ている。

天国の白徳様、白蓮様、白雄様。白龍様は今日も立派に育っておいでです。



裾をぱんぱんと払うとぺこりと一礼する。


『では、今日も白龍様のお姿を見れましたので私は仕事に戻りますね!!』

「ああ、頑張れ」

『はい!ありがとうございます!』


こけないように廊下を走る。


と、不意に後ろから声がかかる。
それはどうやら白龍様が叫んでいらっしゃるようだった。


「ルーシェ!お前は何でそんなに俺のところへ来るんだ?」


今までずっと思っておられたであろう疑問。

その問いに、私はにっこりと笑うと叫んだ。



『それは――秘密です!!』




だって好きですから!


だから私は昨日も今日も明日もずっと

貴方を見続けたいんです。

 

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