夕焼けの向こう側
□最終
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あれから数日後。
私は港に来ていた。
「オリシア、行きましょう」
シンドリアに向かうために。
あの時、私は殺されるはずだった。
だけど、私の両親が・・・村の皆が生きて欲しいと願ってくれた。
その後皆私に謝って、村を案内してくれた。
お母さんとお父さんは泣きながら「許さなくて良い」と言っていた。にっこりと微笑んで手を握ると、「本当にごめんなさい」と、ずっと繰り返していた。
みんなのお陰で私は今、ここにいる。
生きている。
ジャーファルさんの隣にいる。
シンドバッドさんが船に乗り込み、ジャーファルさんと私も船に乗る。
「では、出航します」
ゆっくりと船が動き始める。
何となく離れていく岸に目を向けると、そこには村の人たちが集まっていた。
「オリシアー!!シンドリアに行っても元気でねー!!」
お母さんの声。
「いつでも戻ってきて良いんだからなー!!」
お父さんの声。
「オリシアちゃん、今まで本当にごめんなさい!!シンドリアでの幸せを願っています!!」
「「「「「行ってらっしゃい!!!!!」」」」」
皆が声を揃えて叫び、手を振る。
大きく手を振っていると、ジャーファルさんが私に尋ねた。
「オリシア、この日の為に練習してきたんでしょう?
言ってみたらどうですか?」
こくり
頷くと、すぅっと息を吸い込み――
『行ってきます、皆!』
岸には笑顔で手を振る村の皆。
そして、涙を流して手を振るお父さん、お母さん。
後ろには目を見開いてから豪快に笑うシンドバッドさんや、船の人たち。
隣には――
柔らかく微笑む、貴方の姿。
「シンドリアには2日後の夕暮れにつく予定です」
心地良い潮風が頬を撫でる。
夕焼けの向こう側に思いをはしらせ、私はジャーファルさんに微笑みかけた。