夕焼けの向こう側
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「・・・あの子を、生かしてあげてください」
「・・・あなた方は?」
「あの子の、両親です」
シンドバッドは二人をじっと見つめた。
娘が忌み子として連れて行かれたからか。
髪は殆どが白髪になり、顔には多くの皺が刻まれたいた。
女性は泣き崩れ、男性に支えられる。
やがて、男性が苦しそうに口を開いた。
「あの子は、私達の始めての子供でした。
妊娠したと分かった時、妻は泣いて喜んでいました。・・・それなのに、生まれた子供は私とも妻とも違うかった。
信じられませんでした。忌み子の条件に当てはまっているなんて、誰かに冗談だと笑い飛ばして欲しかった。
でも、あの子は確かに自分達の子供だった」
泣いていた女性は顔を上げた。
「連れて行かないで。私達の子供を奪わないで。
どれだけ叫びたかったことでしょう。だけど、それは許されないんです。
そんなことをしたら、私達も殺される。私達は自分の命が惜しくて、娘を見捨てたんです。
許してもらおうとは思っていません。だけど、」
今度こそ、幸せになってほしい。
「今更親の顔をするなんて、と思うかもしれません。
だけど、これは本当に、私達の願いです。
・・・忌み子の処罰は私達が代わりで受けても構いません。
あの子を、生かしてあげてください」
深々と頭を下げる二人に、村長は目を見開いて固まっている。
民衆全ても固まっていた、直後。
「僕達からもお願いします」
再び進み出た二人組。
若い二人は恋人同士であることを物語っていた。
「手のひらを返すなんて、と思うかもしれません。
でも、あの人を助けてあげてください」
「私だったら、そんなことできません。
でも、彼のためならできるかもしれない。そう考えると、彼女の為に何かしたいんです」
「「お願いします」」
深々と頭を下げる。
「お、俺からもお願いします」
「私も・・・!」
「僕も!!」
私からも!!と人々が――民衆全てがシンドバッドに頭を下げた。
声だけ聞こえていたオリシアは涙が止まらなかった。
――みんな・・・
皆が、私のために。
しきたりを破って、頭を下げてくれる。
溢れ出る涙が止まらない。
「そんな・・・」
村長は体を戦慄かせ、崩れ落ちた。
「これが、人間が光に導かれたときの行動なのですよ、村長」
シンドバッドの二人を見つめる視線は優しかった。