夕焼けの向こう側

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――私達と一緒に、シンドリアに帰りませんか?




そんな提案は、口にすることができなかった。
否、口にすることはできた。只、彼女が頷くとは到底思えなかった。

この村を憎んだりしているのなら可能性はあるが、彼女の美しい瞳はそれを思わせない。
また、この村から逃げたいと思っているのなら私に出会う前にとっくに逃げているだろう。


拒否されるのが怖くて、口に出すことができなかった。






「それにしてもシン、貴方が真面目に椅子に座っているなんて珍しいですね。槍でも降るんじゃないですか?」

「・・・それは言い過ぎだろう、ジャーファル。俺だってたまにはちゃんと務めを果たすさ」


軽い会話を交わしながら珍しく真面目に書類に向かってるシンに紅茶を入れようと支度をする。


「珍しいといえば、今日は妙に外が静かだな。何かあるのか?」

「さぁ・・・私は存じ上げませんが」

「おや、アンタ達知らないのかい!?」

「「・・・誰ですか」」

「おっとすまない!通りすがりの者さ!」


急に窓から元気の良さそうな男性が声をかける。

思わず不審な目で見てしまったが、当の本人はそんなことを気にするタイプではないらしい。大きく笑うと言葉を続けた。


「俺は行商で色々回ってんだけどよ、今日は数年ぶりの祭りみたいなものがあるらしいぜ?」

「祭り・・・ですか」

「ああ。何でも毎年行えるもんじゃないらしいぜ?」

「ほう。それはどんな祭りなんですか」


シンドバッドが適当な相槌を打っているときに、ジャーファルは沸いた湯に茶葉を入れようと持ち上げた。










「この村の忌み子の処刑さ!」







ガシャン!!





「ジャーファル!?」

「あ・・・あんた!?」



するりと手から滑り落ちたポットから熱湯が飛び散る。
そんな事を気にせず、ジャーファルは外へと飛び出した。




「ジャーファル!!待て!!」



主の制止も聞かずに。


 
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