夕焼けの向こう側
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外に飛び出し、耳を澄ますとそれほど遠くない場所から沢山の人の気配がする。
そちらは確か――広場があったはず。
ざわりと生暖かい不穏な風がジャーファルの頬を撫でる。
クーフィーヤの影に隠れていたジャーファルの目が一瞬だけ見えた。
それは、殺気の篭った瞳。
溢れだす殺気を押し殺し、広場へ向かって走り出す。
――何故あの時言葉に出さなかった!?
自らを責める言葉が脳内で蠢く。
それと同時に抑えきれない殺気が空気を冷やす。
それを止めたのは――
脳裏に浮かぶ、オリシアの笑顔。
広場に近づくと共にざわめきが大きくなる。
「忌み子の最期を皆で笑おうではないか!!」
「「「おおおおおお!!」」」
「っ・・・!!」
村人が邪魔でオリシアの姿が見えない。
高らかな男の声に唇を噛み締め、双蛇鏢を放つ。
「う、うわぁぁぁああああ!!?」
「なんだぁぁぁああ!!?」
何人かを双蛇鏢でなぎ倒すと、それに驚いた民衆が振り向いて断頭台までの道を開く。
「オリシア!!!」
喉に痛みが走るほど、力の限り叫ぶ。
すると、透き通った紅い瞳が。
閉じられていたオリシアの瞳が。
ゆっくりと開かれ、ジャーファルを捉えた。