夕焼けの向こう側
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がちゃがちゃと小屋の鍵を開ける音。
そちらを見ていると音が止み、ゆっくりと扉が開かれる。
「時間だ。出て来い」
無機質な短い言葉に私は立ち上がる。
扉の外に出ると髪が風でふわりと靡く。
そこには、今までに見たことのないほどの、たくさんの人。
広いはずの広場が人でいっぱいに埋まっている。
その光景に呆気にとられていると手を縛っている縄を引っ張られる。
「何をしている。さっさと歩け」
歩きながらもきょろきょろと辺りを見回すが、ジャーファルさんの綺麗な銀髪は見当たらない。
やはり、私が処刑されるのを知らないのだろうか。
・・・いや、知らなくていい。
ジャーファルさんに死ぬところなんて、見られたくない。
何段かの階段をあがると、そこには木で出来た何かと、それにぶら下げられる大きな刃。
「こいつは断頭台だ。今までの忌み子もこれで処刑したよ。
・・・お前は中でも特別治癒力が高いが、これじゃあ流石に死ぬだろうな」
馬鹿にしたような口調で続ける男は再び私を引っ張ると、断頭台に押し付けた。
「今から忌み子の処刑を行う!!
村を苦しめる忌み子の最期を、皆で笑おうではないか!!」
おおおおおお!!!と男の声に合わせて拳を突き上げる。
がしゃり、と刃が設置されたような音。
人々の蔑む目を一通り眺めると死を覚悟するように、ゆっくりと目を閉じた。
そのとき、
遠くで誰かの悲鳴と、
私の“名前”を呼ぶ声が聞こえた。