君が居た。
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いつもと何ら変わりの無い日常。
そんな時だった。
ドゴォン!!!
そんな爆音がシンドリアを包み込んだのは。
◆ ◇ ◆ ◇
シンドリア全土を包み込むヤムライハの強力な結界がどろどろと溶けるように空中に浮いている。
人々と悲鳴が伝染するように広まっていく。
「バカな!ヤムライハの結界が破られただと!?」
突然の事態に目を見開くシンドバッドを更に追い詰めるようにジャーファルの声が荒げられる。
「シン、あれを!!」
ジャーファルが指を差した先は、シンドリア王宮の広場の中央。
そこは、いつもと変わりは無い。
――只一つ、漆黒の存在以外は。
「っ・・・ジュダル!!」
既に広場にはピスティを始め八人将や兵士が集まっている。
シンドバッドの鋭い視線が、ジュダルの腕の中で眠る存在に再び目を見開いた。
「楓・・・?ジュダル!」
何かしたのかと言いたげな困惑の視線にジュダルは答えずに「おっかねぇ顔だな」と軽く受け流した。
「貴様・・・」
ジャーファルが自身の眷属器、双蛇鏢(バララーク・セイ)を目にも留まらぬ速さで放つ。
しかし――
ビタッ!
ジュダルを包む光がそれを阻んだ。
一方ジュダルは紅い輝きを持つ杖をくるりと回転させた。
すると竜巻が巻き起こり、ジャーファルを襲った。
「ザコはどいてな・・・。俺はシンドバッドに用があるんだよ」
「なんだと・・・!?」
壁に激突したジャーファルの目は蛇のように鋭い。
ゆらりと再び双蛇鏢を構えたとき、主の声がした。
「やめろ、ジャーファル。
・・・何をしに来た、ジュダル」
依然鋭い目つきのシンドバッドに軽く手を振る。
「なぁ、うちの親父どもがあのチビどもを狙いに行ったぜ?」
「その件は片付いた。彼らは既に八人将が保護した」
「・・・ふーん。
そうだろうな。まがいものの金属器使いごときにあいつらはどうこうできねぇよ」
ぐるりと辺りを見回す。
突き刺さる敵意。
それに薄く笑うと言葉を続けた。
「なぁ、シンドバッド。お前はあいつをどう思ってんだ?」
「・・・あいつとは?」
「アラジンだよ。
おかしいだろ?この世にもう一人マギが存在するなんてよ!!」