君が居た。
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わなわなと震えてヤムライハに叫ぶ。
「ヤムライハ!俺の無実を証明してくれ!」
「・・・本当にしてないんですね?私は真実しか見せられませんよ?」
「ああ、構わない」
これだけ訴えているのに未だに信じてくれていないことに少し愕然としたが、今は気にしている場合ではない。
早くしないと楓に殺される。
目が本気だ。
◆ ◇ ◆ ◇
はい、とゆーことで今からヤムライハの水魔法によるシンドバッドさんの身の潔白証明会が始まりまーす。
・・・本当どうでもいい。
いや、どうでもいい事はない。なんて言ったって紅玉様が関わることなのだから。
どうでもいいのはシンドバッドさんの身の潔白だ。
もうこの際どうでもいい。
『てことで斬り捨てて良いですか?』
「駄目に決まってるだろ」
『ちっ』
「舌打ち!?」
何でなのさ!
火の無いところに煙は立たないっていうじゃん!
もうシンドバッドさん罪確定じゃん!
悶々と考えているとヤムライハが二人の血に魔法をかけ、水人形が出来上がった。
・・・とことん水系ですね、この人は。
一旦思考を中断し箱庭を覗き込む。
すると水紅玉様が宴会の席にいる水シンドバッドさんを盗み見しているところだった。
やがて水紅玉様はその場を離れて廊下を歩いていると、突然バタリと倒れた!
『水紅玉様!』
「水紅玉様!?」
思わず口に出してしまっていたようで後ろにいたジャーファルさんがぎょっとした声を出す。
もう私のことは気にしないで下さい。
ふわりふわりと浮く水紅玉様は寝所に運ばれる。
なんとそこには既に寝入ったシンドバッドさんの姿が。
『先寝てたんだー』
「・・・これ以上は子供は見ちゃいけません」
『え、何で?』
突然視界が真っ暗になったかと思えば、どうやらジャーファルさんに目隠しをされたらしい。
渋々と音に集中しているとピスティさんとかがきゃーきゃー言っているのは聞こえたが、暫くすると
「・・・結局朝になっちゃったね」
「何にもなかったじゃん」
ですと。
『え、嘘。本当ですか?』
「楓、そんなに俺を信用できないのか?」
『全く!』
「・・・うぅぅぅ・・・」
沈んだシンドバッドさんはさておき、私は軽やかに紅玉様に近寄る。
『良かったですね紅玉様!あんな野郎に触れられていなくて!』
「え、ええ・・・そうね?」
『何故疑問系なんですか』
あはは、と苦笑されるがまぁ置いといて。
『じゃ、結局犯人は・・・?』
ちらりと夏黄文殿を盗み見ると、どうやら魔法の結果に納得していないらしく、未だにシンドバッドさんに詰め寄っていた。
流石に諦めましょうよ、と声をかけようとしたとき。
「もう止めて、夏黄文!」
『こ、紅玉様?』
意外にも止めたのは紅玉様。
呆気に取られていると、紅玉様はその場に座り込むと小さく嗚咽を漏らし始めた。
『紅玉様ぁ・・・!!』
つい釣られて私達も泣き始める。
紅玉様がお可哀相・・・!
うぁぁ・・・!!
ざっ
「スミマセン、全部夏黄文さんがやりました!!」
・・・ぅえ?