君が居た。
□3
1ページ/1ページ
『あ、そうそうジュダル』
「あ?」
『紅炎様から言伝。玉艶様のところに行くように、だって』
「めんどくせぇ」
『そんな事言わない』
ベッドに寝転んでいるジュダルのマッサージ中に言伝を思い出す。下手だとかこてんぱんに毎回言われるけど私にやらせるのは気に入ってくれているのだろうか。
面倒臭いと駄々をこねるジュダルを行くようにと促していると、ふと気になることが頭に浮かんだ。
『ねぇジュダル』
「あ?」
『玉艶様ってお亡くなりになった元皇帝、紅徳様の兄上様のお后だったんだよね?
それなのに、紅徳様のお后って良いの?
それだけじゃないけど、たまに違和感を覚える・・・』
玉艶様。
敗残兵に夫を殺されたお方。
今は現皇帝、紅徳様に嫁がれているお方。
私はその頃の王宮内の事情は知らない。只、疑問に思うのが、「あまり元皇帝の死を悲しまれていないこと」。
私が来た時には既に数年経っていたから当たり前かもしれない。でも稀に、玉艶様に違和感を覚える。
―何か底知れぬ物を持っている気がする。
「お前鋭いな」
『――え?』
「・・・いや」
なんでもねぇ、と枕に顔を埋める。
「そうだ楓、お前迷宮攻略しにいかねーか?」
『・・・は?』
何言ってるのこの男は。とうとう頭がおかしくなったのかな。
軽く軽蔑の目で見ると顔面に枕を投げられた。
地味に痛い。
「ババアとかはもう行ったからな」
『白龍様は?』
「嫌がるんだよ。意味わかんねぇ」
『私は別に・・・。練家じゃないし、もし攻略しても力の使い道が分からないし・・・遠慮しとく』
「・・・お前も意味わかんねぇ」
『それはごめんねっと』
「いってぇ!!」
ちょっと嫌がらせにグイっとツボをおしてやった。
『あんまり白龍様に強要しちゃ駄目だよ』
「・・・・・・」
『はい、お終い。玉艶様のところいってらっしゃい』
「チッ」
チッて。舌打ちされた。行かなくて玉艶様に叱られるのはジュダルだよ?紅炎様に叱られるのは私だけど。
呪いをかけるようにジュダルの背中を見つめていると「あ」とジュダルが振り向く。
『何?』
「お前今紅覇の手鏡探してるんだってな」
『うん。見つからないけど』
「ほら」
『・・・え?』
何故かジュダルの手には金で装飾された美しい手鏡が。
『これって紅覇様の・・・?何でジュダルが?』
「あいつが失くさないようにって俺に渡してたんだよ」
『・・・・・・・・・』
嬉しそうなジュダルは・・・まぁ百歩譲って許してあげる。
『ちょっと紅炎様にチクってくる』
その後紅炎様に伝えると紅覇さまはこってり絞られていました。
その後私は紅覇様にこってり絞られました。死ぬかと思った。