テニスdream

□スキキライ
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「謙也のアホ!バカ!スピード狂!!」
「うっさいわブスー!」
「な、なんやてぇ!?もういっぺん言ってみいや!」
「なんべんでも言うたるわブスブスブスブスブスブスー!!」
「…っテニス部で一番ブサメンなあんたに言われたくないわ!言うとくけどなぁ、あんた女子たちの間で将来ハゲそうな男ランキング1位やで!?知っとったぁ!?ほんま笑かすわーwwwハーゲぇ!!!」

「なっ……!!?」


いくら俺がひよこっ毛やからって今のはないやろ。
酷すぎる!!
俺の繊細なプレパラートハートが何枚か逝ったで…

あまりのショックに立ち尽くすことしかできない俺の肩に、白石がそっと手を置いた。
正直今はそっとしておいて欲しい。
眩しいイケメンフェイスが悪気もなくもう何枚目かわからない俺のハートに指をかける。


「まーたケンカしとるんか」
「アイツ言い逃げしおった」
「謙也があんなこと言うからやろ?いくら彼女でも女子に向かってブスはないわ」
「別にええねん。俺は真実を教えてやっただけや」
「加藤のおらん所で意地張らんといてや(呆)」



だいぶ気持ちも落ち着いてきて、あいつけっこう怒っとったなぁと冷静になってみる。
あれでは暫く口も聞いてくれんかもしれん。

ケンカ自体は通常運転やったのに。

俺たちは付き合うようになる前からずっとこんな感じでやってきた。

些細なことでケンカになるし汚い罵り合いが始まるし、時には何日もお互い目も合わさんぐらい意地の張り合いが続いたりするもんで、よう今の今まで別れんかったわと我ながら思う。

周りの奴らも呆れ倒すくらい繰り返してきた。



今日やって些細な事やった。

なんやらしくもないショゲた顔しおってからに、いきなり自分の事が好きかどうかなんて聞いてきた。
冗談半分、照れ隠し半分、『お前みたいな口の悪い女はキライやわ』って言うたら怖い顔して眉なんか吊り上げて怒りよった。

それに乗せられてついつい、俺も口走ってしまったわけや。


『お前みたいな彼女欲しくなかったわ!』



…って。

ほんま馬鹿やわ、あいつも俺も。


勢いに任せて心にもないような言葉まで相手を傷つけると分かってて言うてまう。

たぶん似たモン同士やんなぁ、俺ら。

単純なとことか意地っ張りなとことか割と人一倍ナイーブなとことか。



(泣いとるんちゃうかな…)


言いすぎた。
素直にそう言える自信はない。

けど、泣いてる桜を一人にしてはおけんし。


「それに、あいつモテるやん」


「は?」



今まで全く耳に入らんかった白石の声が、そこだけはハッキリと聞こえた。

「誰がや」
「加藤」
「誰に」

「お前知らんのか!一応腐っても彼氏やろ?お前と加藤が付き合いだすようなる前までは狙ってる奴がわんさかおったんやで?今まで散々男をふってきて、まさか謙也と付き合うとは誰も思っとらんかったみたいやけどな」


アイツがモテる?嘘やろ?
ほんまに口の悪い奴やで?
そこら辺の男が何人でかかっても言い負かせるくらいドギツイで?
俺なんか口喧嘩で勝てたことないわ。

それにあんなじゃじゃ馬他におらんやろ。


可愛げもない。
女らしくもない。
むしろ俺より男っぽい。
おまけにすぐ怒りよる。

そんなアイツの性格も全部含めて好きになる奴、俺以外におるか?



「しゃーないから迎えに行ったろ」

仲良うやれよーなんて白石が行った時にはもう走っとった。

あかん。
今になってちょっと焦ってる。

“キライや”とか“お前みたいな彼女欲しくなかった”とか思うてるはずないやん。



桜の事が好きかどうか?

聞かんでも分かるやろ、そんなん当たり前や。


手に負えん程暴れ馬なとこも、怒った時のブッサイクな顔も。








めっちゃ好きや。







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