忍dream

□ご褒美くれますか?
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「ねー藤内ー」
「…」
「ねーねーねーねー」
「……」
「藤内くぅーん?」

「先輩!!」

いつも通り、まんまと先輩のワナに引っかかった俺。
先輩にとってこれ程扱いやすくて面白いオモチャは他にいないだろう。
そうと自分で分かっていても、どうしても気が散る!


「僕授業の予習をしてるんです!勉強の邪魔するだけなら帰ってください!」
「うわぁ藤内冷た〜いっ先輩に向ってその態度!もしかして反抗期ってやつかな?」
「何が反抗ですか!僕の方から言わせてみれば先輩のやってること以上の反抗はないです!大体遊ぶ相手なら他にも暇そうな奴がいっぱい居るでしょ!?」
「まぁね〜…そうなんだけどさ。あたしは藤内がいいの。」
「っ」


阿呆か。

なんだよいきなり変なこと言いやがって。
調子狂うし、言い返せないし…。
あぁもう、ここまでちょっかいかけてきたのは先輩の方だ。
反撃してやる。



「…じゃあ先輩、僕の予習に付き合ってくれます?」

「うん!♪」


俺の方から何かを手伝って欲しいなんて言った事がなかったから、先輩はいとも簡単に釣れた。


「実を言うと先輩にしか出来ない事なんです」
「あたしにしか?」
「はい」
「何!?何!?あたしに出来る事なら何でもするよ!」


俺よりも年上なのに無邪気な小さい子供みたいに目をキラッキラさせてる先輩を、どうしても本気で怒れないんだよなぁ。
ある意味特技なのでは?
この人自体は気づいてないんだろうけど。




「(何でもって…)じゃあこっち向いて下さい」
「?」
「それで、目閉じて」
「うん…?」
「肩つかみますよ」


「!」








………………





ふわふわとした甘い香りが鼻をくすぐった。
唇があまりの柔らかさに震えたのはたった一瞬の出来事で、それなのに、俺の唇はしっかりとその感触を記憶したようだ。



「……キスの、予習です」




今まで見たことが無いくらいおとなしくなったと思えば、先輩は真っ赤になって勢いよく立ちあがった。

やっべ、バレた?やりすぎた?
…怒ったかな?



何も言わずに部屋を出ていこうとする先輩に、俺は声がかけられない。
ただ、後悔だけが唇に残ったまま。


俺は馬鹿か……




「…ゅう」

「え?」






「復習ならいつでも付き合ってあげる……なぁんてね」









パタパタと走り去って行く後ろ姿に赤くなったのは、今度は俺の方だった。



あーぁ、調子狂うな全く…
初めて勝てたと思ったんだけど。

やっぱ敵わねぇや。



勉強は中止!
今から急きょ予習しなきゃいけない事ができたんで。











…先輩に『好き』って言う予習。















それから、ほんのちょっと欲を言うなら、
予習のご褒美に先輩の方からキスして欲しい…










ご褒美くれますか?

(なぁんて、ね)









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