はじまりはじまり

□0214企画 
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「ただいまー」
「おかえり健ちゃん」


玄関を開けると夕飯の良い香りでいっぱいだった。
部活が終わって遅くなると、こうして名無しさんの家に寄ることが多い。学校から近いってのもあるが、それはほんのおまけ。


「腹減ったなあ、今日は何?」
「肉じゃがー」
「おお!名無しさん肉じゃが作れんだ」
「うん、まあ適当に」
「おいおい」


その適当がいつも外さないんだからすごいよな。
顔を見合わせて二人で笑った。これだけでも1日の疲れが吹っ飛んでしまう。
なんていうか、愛しさで。

シャワー浴びてきちゃえば?と名無しさんの勧めで、俺はそのまま風呂場へ向かった。
さっと済ませてリビングへ戻ると、二人分の夕飯がすでに用意されていた。流石。

こりゃあいいお嫁さんになるわな。
勿論、俺の。


ではでは二人手を合わせて、いただきまーす!まず始めは、肉じゃがでしょう。
これにはぶったまげた。美味い、美味すぎる!他に言葉にならないくらい美味い。やっぱり名無しさんってすごいよ。

「本当?ありがとう健ちゃん」
「いや、いつもこんな美味いもの作ってくれてありがとう。名無しさん」
「健ちゃんが喜んでくれるの一番嬉しいよ」
「あ、はは」


まあたそうやって、何でそう可愛いこと言うかなああ!まあたそんな可愛い顔して。
俺の顔が熱いのは、決して風呂上がりだからじゃないぞ。
それ分かってる?

「あ、そういえば健ちゃん」
「んん、何?」

名無しさんからのふいなフリにもぐもぐしながらちょっと戸惑う俺。


「今日は、たくさん貰ったの?チョコ」
「え…。ああチョコ」
「貰ったんでしょう」
「んや。貰ってない」
「またまたー!ウソつかなくて良いのに」
「んや。まじで貰ってない」
「え、健ちゃん?」


名無しさん、目がまんまるになってる。くそ、可愛い…。
俺は肉じゃがをよく噛みしめながら、口の中がなくなるまでタイムを取った。

「今年から貰わないようにしたんだ。俺にはずっと、名無しさんがいるから」
「…健ちゃん」

みるみるうちに名無しさんの頬が赤く染まっていった。
飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになった。


「ちょ、健ちゃん何で笑うの!」
「だって可愛いんだもん名無しさんが」
「…健ちゃんにあげるチョコは無いからね」
「知ってる。お菓子作るのは苦手なんだろ?でも料理こんなに美味いのになあ……、あ!」
「えっ何」


忘れてた、ていうか思い出した!
俺は箸を置いて自分のリュックを開けた。そうだそうだ、さっき買ってきたんだった。

俺からの愛情一本。


「はい、名無しさん」
「健ちゃん、これ…?」
「今流行ってるらしいじゃん。逆チョコってやつ?たまには俺からのも良いだろう、何か変で」
「うん…。変」
「おま、あっさり言うなよ」
「ちしし!」



中身は大したものじゃないけどさ、
チョコの中身より何より、
俺の気持ちがたーくさん入ってるから、
そこんとこ、渡しとくよ。
名無しさん。












(明日もこうして側にいて)
俺の隣は、いつだってお前だ
これからもずうっと





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V a l e n t i n e!
0214 藤真

tochi

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