はじまりはじまり

□お題より
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「うう、寒…」

部活の帰り道。マフラーに顔を埋めて、手はポケットの中。
部員たちと駅で分かれて、街灯の少ない道を早足で歩いた。

「…ん?」


ふいに辺りを見回す。何だか、いつもより全体的に明るいような気がする。街灯が増えたとか、そういうんじゃなく。何だろう?



「あっ」

顔を上げたその瞬間、俺は思わず声をもらした。

そこには澄んだ夜空に広がる星。目に収まりきらない程、どこまでも続く星の海。暗いのに何となく明るく感じたのは、この見事な光景だった。

「きれいだなー…。こんなに見えるの久しぶりだ」

あまりの見事さに足が止まる。正直寒い。けれど、見たい。白い息を吐きながら、俺は暫く星を眺めていた。


「…名無しさんも見てるかなぁ」


自然と思い浮かぶ、愛しい彼女の顔。名無しさんは同い年でどこか大人びていて、でも時々すごく子供っぽくて。
怒ったり泣いたり笑ったりコロコロ変わって、いつも俺を心配させる。けれど今じゃあ、それも含めて全部好きなんだけど。


「紳一、ずっと一緒にいようね」

そう言われたときは、さすがに俺もたまらなくなって抱きしめたっけな。周りの目も気にせず…。

「真っ赤な顔で怒る名無しさんも可愛いんだよなぁ」

一緒に見たかったな。この空を、この星を。
もしかしたら今、名無しさんもそう思っていたりするのだろうか。


するときれいな夜空から、星が一つ流れ落ちていった。

「あっ今」

その直後、俺のポケットに入ってた携帯が鳴りだした。










(同じこと、考えたりしてるかな)
それは愛しい君からの着信音






I ラブ 牧ぃ!
tochi

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