テニスの王子様

□立ち止まったのは 完
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仁王君と私が付き合い始めたのは1ヶ月前

付き合い始めは小さな違和感だった
でも数日でその違和感が大きくなった

違和感は仁王君は私を視てないって事だった
仁王君は私を通して他の女性を視てた



だから




もう終わりにしないと


―――
――――――


仁王君の家に遊びに行く約束をした日
これで最後にしようと決めた
仁王君と恋人ごっこをするのは

『仁王君』
「なんじゃ?」

仁王君は読んでいた雑誌から目を上げた

『貴方は誰を視てるの?』
「雑誌読んでたからヤキモチかの?」

仁王君は少し苛々した言い方だった

『貴方は私を通して誰を視てるの?』
「!...」

仁王君はかなり驚いていた

『分かってたよ?仁王君に好きな人が居ることぐらい...でも、それでも諦められなくて...当たって砕ければ良いと思って告白したの』

私は泣きそうで
でも仁王君の前では泣きたくなくて
目を伏せて伝える

『そしたらさっ、奇跡的にOK貰って、嬉しかった。付き合えたんだったら振り向かせれば良いんじゃない?なんて浅はかに考えてた』

こんな狡い事を考えてたなんて知って欲しくなかった...

『1ヶ月までは、フラれるまでは頑張ってみようと思った。けど、やっぱり貴方は私を最後まで見てくれなかった...』

期間を決めたのは私が弱かったから

『仁王君、貴方は気持ちを伝えないの?自分にいつまで嘘をつくの?私はその人が誰かは分からなかったけど、仁王君が好きになった人なら素敵な人だと思う』

あぁまだ泣きたくはない

もう少しだから...

『だから、私と別れて下さい。
そして、その人と幸せになって下さい。


少しの間でしたが

ありがとう
私は貴方と居られて幸せでした!』

私は言い切り仁王君に笑顔を向けた
仁王君は怒らず笑わず
ただただ驚いていた

「...ぇ」

私は我慢できなくて走って逃げた
声を聞いたら泣くのが分かったから

『...っ..』

かなり走った仁王君の家から遠ざかりたくて
仁王君の前では強く居たくて泣くのを我慢してた
だけど周りを見ると誰も居なくて
限界で...声を抑え泣いた

『..すき、なのにぃ...うぅぅ』

やっぱり好きだった大好きだった初恋だった
私の目には貴方は眩しくて手なんて届かないと思ってたのに
受け入れられた事に舞い上がって気付かない様にしてた

『すきぃ、にお、うくんが...うぅ、すきなのっ!』

諦めるなんて自分が決めたのに...
好きになってはいけないのは苦しい
胸の奥をギュッと握られた様に苦しい
のに


あぁ涙が枯れてく

もう忘れなきゃ
考えることを好きだったことを


『んっ...忘れなきゃ...



好き。でした...



さようなら。...仁王君』

強くならなくちゃ

私も貴方も

私は一歩だけ強くなったよ?

貴方も強くなれるんだから頑張って





私は先に進むね?




【伝えることは強くなること】


【先を見つめる】



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