君は笑いながら言った。人生なんて不公平なものだと。

□キッド
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視線が交わった瞬間に悪寒が背中を這いずり回り、くらくらと痛む頭と胃を突き上げる嘔吐感。

蛇に睨まれた蛙の如く、はたまた肉食獣に追い詰められ死を予感する草食動物の様に得体の知れない恐怖感が脳髄から五感の全てそして、毛細血管までもを支配する。



(嗚呼、これが)



懸賞金三億ベリーを越える男の気迫か。
ごくりと飲み下した自身の唾液の音さえやけに耳に付く。
瞬きの音ですら、聞こえるんじゃないかと思う程に静かすぎる。



「…言い訳はしねぇんだな…?」



(あっても聞いてくれないくせに…っ)



「無言は肯定とみなす。」


答える暇さえ与えられずキッドの綺麗に黒いネイルが塗られた指先が頬にするりと伸びてきて、あと数10cmで鼻と鼻がぶつかる場所でニヤリと不敵に笑うものだから。



自分の愚かさに酷く、



(だっ、だってキッドのコートがあたしを誘惑するんだもの!!!一緒にお昼寝しようって!!)
(…阿呆か!!昼寝して海に落とす馬鹿がどこにいるってんだ!!!)
(ここに居るよ!はい、あたし!!)
(………)
(…そんな睨まないでよ、)



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