DESSERT LOVE

□愛してる
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『今夜、お前の部屋に行っても構わないか?

渡したいものがあるんだ』

渋谷さんからのメールに気付いたのはお昼休み理沙と食事中のこと。

そういえば、今日は3月14日、ホワイトデーだ。

パティシエの渋谷さんは

どんなプレゼントを用意してくれたんだろう?

少し期待感でドキドキする。

だって、渋谷さんのお店のスイーツはどれも美味しくて、

見た目も可愛らしい。

彼がプライベートで作るお菓子なんてドキドキする。

「あれ〜、楽しそうな顔して携帯覗いちゃって。

あっ、今日はホワイトディだものね。

デートの約束か……」

さっきから、たらこパスタを食べながら、

お砂糖たっぷりのロイヤルミルクティーを飲んでいた理沙は、

何やら意味深な顔で私の顔を覗きこむ。

「で、相手は誰なのよ?

優しくて頼れる上司、一条さん?

それとも渋いおじ様、榊部長?」

理沙は楽しそうにおどけた表情で聞いてくる。

「何言ってるの。社内恋愛は禁止でしょ」

私はクスリと笑ってベーコンたっぷりのペペロンチーノを口に運ぶ。

「それじゃあ、ナンパな小説家さん?」

必死に食い下がる理沙に笑いながら首を振る。

「誰よ!教えなさいよぉ!」

ちょっと意地になった様な表情の理沙がおかしくて

私はクスリとまた笑った。

「なによぉ、いつから秘密主義になったの?

まさか、あのばかがつくほどお人好しなケーキ屋じゃ無いでしょうね?」

理沙がありえないなんて顔で言うから、

私は思いっきり首を縦に振ってみる。

「うそぉ…」

理沙が目を白黒させてパスタを飲み込む。

「…いつの間に?どこが良かったの?

ねえ、どこまでいってるのよ?」

理沙の矢継ぎ早の問いをやんわりと交わして私は微笑む。

「今夜、部屋に来るんだって。

ねぇ、夕飯は何作ったらいいかなぁ?」

私の一言に理沙は大きな溜め息をついた。

「はいはい、勝手にラブラブして下さいな。

どうせデザートはあんたでしょう」

理沙の一言に心臓がドキリと跳ねる。

渋谷さんの広い胸のぬくもりを思い出し、

頬が熱くなる。

きっと今の私、赤い顔をしてる。

私はぼーっとしながら渋谷さんの人懐っこい笑顔を思い出す。

「なに幸せに浸ってるのよ。

急がないと昼休みが終っちゃう」

理沙の声に現実に引き戻された私は

慌ててコーヒーにミルクを入れカップを口に運んだ。
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