好きかも。

□四章
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「ふぅ〜」

中庭のベンチに座って溜め息をつく。

疲れた。無駄に。

あの女がきてさらに。

毎回適当にあしらうにも限界がある。しつこい奴だと家まで来るなどストーカー紛いなことまでしてくる。

家が唯一、俺が素でいられる場所なのに…

「あの…」

いつの間にか寝ていたようだ。
不意に声をかけられびくついた。

「…何?」

背もたれにもたれかかったまま顔も見ずに尋ねる。

「こんな所で寝てたら風邪引きますよ?」

ニコッと笑いながら言う。

心配してますよアピールかよ

「…うるせーな」

俺はボソッと文句を言った。

「え?」

アピール女は笑いながら聞き返してきた。

「なんでもないよ?心配してくれてありが…!!」

そこで俺は初めて女の顔を見た。

嘘だろ!?なんで…なんでお前が…

『悠斗くん…バイバイ』

『沙耶ちゃん?』

小さい時は分かんなかった。

今になって思えば、最後の別れだったのかもしれない。

そう思っていたのに…

今さら…ズキン

「う…うぁあ…くっ」

ズキン…ズキン…

あまりの痛さに声をあげる。

オマエも今さら痛むのかよ…

「あの!だ、大丈夫ですか?えと…どうしよ」

慌てふためく沙耶。

そんな沙耶の姿を見ながら俺は意識を失ってしまった。

『悠斗くん…』

小さい頃の沙耶。

『どうしたの沙耶ちゃん?』

『悠斗くん…沙耶ね…怖いの』
今でも覚えてる。

『大丈夫だよ!手術なんてあっという間だよ!』

『でももう会えなくなっちゃうんだよ?』

『何言ってるの?絶対に失敗しないよ!97%成功だよ?沙耶ちゃんなら大丈夫!』

『そうかな?』

『そうだよ!』

戻れるなら戻りたい。あの時に。
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