☆短編集☆

□ナキムシ
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「ふわぁ〜」

大きな欠伸をしながらふと視線を窓にやる。

「ゲッ…」

窓を見たのを今更後悔した。

青かった空は一変して灰色に覆われ、ポツリと雨が降り始める。

「うわぁー雨降ってんじゃん」
「なんか毎日この時間だよな」

クラスメートが騒ぎ立てる中、俺だけが1人呆れたような顔をする。

「またか…」

窓を見ながらボソッと呟くとそれと同時に授業の終わりを告げる鐘がなった。

授業が終わると同時に走ってアイツのもとに行き、息を切らしながら慰めたのは覚えてる。

ただ

その後、背中のあたりに激痛が来てからはなんら覚えてない。

…なんでだ?

えっと…順に思い出そう。

アイツと出会ったのは放課後、運悪く、雨が降った月曜日だ。

俺は鞄を頭の上に置き、ひたすら走った

「やっべー…まじ最悪。」

走っていると大きな歩道橋があり、その下が雨宿り出来そうだと思った。

そこで雨宿りしようと足を早める。

「ふぅ〜…」

下にたどり着いた途端、ため息をつき、ハンカチで制服についた雨を拭く。

ポタポタと制服から落ちた水滴は運悪く隣にいた座っている少女の頭に向かった。

「あ…」

気づいた時には遅く、少女のしなやかな黄色い髪は一部濡れてしまった。

「ごめん!大丈夫?」

「…」

コクリと頷く少女にほっとする。

この少女も雨宿りをするためにここにいるのか?

そんなことを思っていると、鼻水をすする音と少し嗚咽が聞こえた。

それも俺の隣から。

まさか…こいつ泣いてるのか?

俺は横目で隣にいる少女を見た。

的中してしまった。

少女は泣いていた。理由は分からないが声を頑張って抑えて泣いていたのだ。

「…どうかしたの?」

口をだすつもりはなかった。

でも、少女を見ていたらつい口に出してしまっていた。

少女は一瞬ビクッと肩を跳ね上げる。

そしてゆっくりと俺の顔の方に自分の顔を向け

「…雨はきらい?…」

と聞いてきた。涙目で“嫌いにならないで”とでも言うかのような目でこちらを見てきた。

「…嫌いじゃないよ」

そういうしかなかった。それ以外に選択肢があったのだろうか。もし目の前で涙を流している少女に同情もなく“嫌い”という奴がいたらそれは人ではない何かだ。

俺の言葉に安心したの少女はふにゃりと顔を歪ます。
楽しそうに…嬉しそうに…。

少女の涙は自然と止まり、さっきまで土砂降りだった雨が何を思ったか急にやんだ。

俺は少女を慰めるかのように少女の頭にポンと手を置いた。

「雨やんだな…お前1人?」

少女はコクリと頷く。

「そっか…じゃあ家どこ?送ってってやる」

「…ない」

「え?」

「いえ…ない」

俺は固まってしまった。家がない?捨てられたのか?それとも両親がいなくてホームレスだったのか?

「…お前名前は?」

「エルシア」

oh my god…
まさかの外国人だった。
てか俺…黄色い髪だった時点で気づけよ…
俺は英語は苦手なんだ。

「あ〜エルシア?how much?」

エルシアは?と言うような顔をした。

あれ〜…何歳か聞くのってhow muchじゃなかったか?

俺がポリポリと頭をかいてかんがえているとエルシアは呆れたように

「日本語でも大丈夫だよ?」

と苦笑いをした。

この日の俺を呪いたい…。

「エルシアは何歳?親はいる?」

「10さい!ママとパパは…」

エルシアは上を指しうつむいた。

ああ…死んだのか…

「いえはないからここがいえ!」

エルシアは何事もなかったかのようなふりをして笑顔で残酷なことを言う。
それじゃホームレスだよ…こんな小さい背中に似合わず背負っているものは大きくて3/2でも取り除いてやりたくなった。
せめて3/2だけでも…

「とりあえず、俺の家来る?」
口が勝手に動いてこんなことを言った。だって濡れたままじゃ可哀想じゃないか。

「いいの?」

俺は大きく頷き、エルシアと共に自分の家へ向かった。

自分の家に着き、とりあえずエルシアにはお風呂に入ってもらったのだが問題が発生した。

エルシアには今日着ていた服しかなかったのだ。

どうする?服は俺のTシャツでなんとかするとしても下着が…
スーパー行って買ってくるか…
エルシアはまだお風呂にいたからその内に外に出た。

家の近くのスーパーへ行き、2階の洋服や雑貨が売っている売り場へ行く。
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