好きかも。

□四章
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『沙耶…頑張る!』

『うん!その調子その調子!』

『もう泣かないんだ。約束したの』

『誰と?』

『大切な人』

『そっか。僕も頑張るよ!沙耶ちゃんも頑張って!』

『うん!ねぇ悠斗くん?』

『ん?なに?』

『これからも沙耶のこと忘れないでね?』

その時は分かんなかった。

そんで気づかされた時には沙耶はいなくなってた。

『悠斗くん…バイバイ』

その言葉が最後の言葉。

小さかった俺と沙耶の最後の会話。

「あ、覚めた。」

目を開けると保健室の矢田先生がいた。

「…俺は?」

起きあがろうとすると矢田にとめられた。

「あーダメダメ。寝てて?」

大人しく横になると矢田は話を続けた。

「一年生の女の子があなたを運んでくれたのよ?後でお礼言っときなさい?」

沙耶か…

「はい。」

「それと…お薬持ってる?」

「はい。それで今は落ち着いてるんですね?」

俺は矢田に問いかける。

「悪いと思ったけどあなたの鞄の中見してもらったわ。あなた、よく今まで平気だったわね。」

「はい。奇跡みたいですよね。でも奇跡は長く続かないみたいです」

俺は苦笑しながら言った。

「同情するわ。私もそれで
息子を失ったから。」

矢田は悔しそうに顔を歪める。

「先生もですか。いつまでか分からないのが嫌な所ですよね。だから俺も今を楽しもうと思ってここにいるんです。」

「そう。私ももう少し一緒に過ごしたかったわ。そうね…せめてあなたの年になるくらいまで成長をみたかった…」

思い出したのか矢田は目に涙を浮かべた。

「俺も今まではどうせとか思ってたんですけど今、生きたいって思いました。」

「それはどうして?」

目をこすりながら矢田は尋ねてくる。

「やっと会えたんです。ずっと…最後に会いたい人に。だからその人に会えた今、初めて…いや、2度目かな?生きたいって思ったんです。」

「そっか…あなたは生きてね?私の息子の夢を叶えて?」

矢田は笑いながら問いかけた。
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