光蔵

□ちゅーしましょ。
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じゃんけん勝負で財前にキスをする順番が無事に決まった。



………………
………



小石川と打ち合いをし終えた財前が、汗を拭くため左端コート近くのベンチに置いてあるタオルに手を伸ばした。首筋を流れる汗を拭いていると、横から声を掛けられた。



「なぁ、財前」


声のする方へ振り向くと、そこにはニヤニヤした笑顔の謙也が居た。財前はウザいな…と心の中で思いつつ、取り敢えず質問してみる事にした。


「何です?謙也さん」

「俺と、ちゅーしよ☆」

「キモイんでやめてください」

「へぶぅッッ!」


何かと聞いてみれば、しょうもない事を口にした謙也。財前は真顔でフザケんなと、素振り並みの勢いで謙也に平手打ちを喰らわせた。




「ほな、次は私の番やねぇvV」

小春が皆に行ってきますの意味を込めてウインクをし、それから内股走りで財前に近付いた。

「光きゅ〜んvVちゅーvV」

「小春先輩キモイっスわ。眼鏡カチ割りますよ」

「光さんっ、やめてぇぇ〜ん!!!」


ハート乱舞で財前のところまで行った小春は、お約束のように眼鏡をカチ割られた。



「次はオレやっ!小春の仇、とったるで!」


ユウジが、空に拳を突き上げて意気込んだ。そして、財前のところに向かう為その場から一歩を踏み出した。


「財前ー、ちゅーvV」


小春同様、ハート乱舞で財前に後4mのところまで近付いたとき…財前が振り返った。手にはケータイが握られていた。



「あ、一氏先輩。それ以上近付いたら、先輩の恥ずかしいダダスベリのネタ…ブログに拡散希望で載せるんで」

「財前!ソレだけはっ…ソレだけは載せたらアカン!!頼むからソレだけはやめてくれっ!!!!」


眉間に皺を寄せて言い放たれた財前の言葉に、ユウジは顔に青筋を立てその場で土下座をしまくった。なにらや、哀れな光景である。




「みんな、苦戦しちょるばい。ここは、俺に任せんね」


千歳がそう言って髪をかき上げた瞬間…。財前が口を開いた。


「あ。千歳先輩は、オレの半径5m以内に入らんといて下さい。入ったら、その髪、ストパーかけて写メってブログに載せますわ」

「ストパーは困るばい。俺ば、この作戦から抜けっとね」

「髪へのこだわりあったんかっ!」


財前の言葉に、千歳は真顔で答え髪を守るように頭を抑えた。そんな千歳にツッコまずには居れなかった謙也。



「光ーっ!ワイも、ちゅー!」

「遠山。帰りのたこ焼き無しにするけど、ええんか?」


大声でそう言いながら、財前に急接近した金太郎。しかし、後少しのところで財前の唇には届かず…。


「ワイ、やめとくわ〜。たこ焼き無しイヤやもん」


たこ焼きに釣られ、金太郎は勝負を放棄して引き返してきた。


「光さん、思ったより手強いわねぇ〜」


カチ割られた眼鏡のまま、小春が眉をハの字にして溜め息を吐いた。財前に敗れた皆がどうしたものかと悩んでいる中、彼だけは違った。



「ほな、最後は俺やな!」


そう。白石がまだ残っていた。敗れた皆は、白石に全てを託すかのように声援を送り始めた。


「白石、照れさせたもん勝ちやで!」

「蔵りん、頑張ってぇ〜vV」

「頑張れ、白石!」

「白石なら、いけっとよ。頑張りなっせ」

「たこ焼き頼んだで!白石!」

「おう、任せとけっちゅー話や!」


そして、白石は皆に見守られる中、財前との距離を縮めていった。



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