小説
□味噌スープ
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〜先日の忍たまを見て滾って書いた話。完全に俺得モノです〜
「おーい!八左衛門また豆腐料理作ったんだけど、食べない?」
竹谷がすることもなく歩いていると、ふと後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。
振り返らなくても分かるその声の主は
「・・・兵助」
竹谷の自分の名を呟く声に嬉しそうに微笑んだ。
「また作ったんだ。で、今回はどんな感じ?」
「それは見てからのお楽しみだって!今時間あったら食べて欲しいんだけど」
「あぁ、いいぜ」
久々知は学園でも有名な豆腐小僧である。とにかく豆腐が大好きで、昔は作った豆腐料理を色々な人に振舞っていたらしい。しかし好きが高じてたくさん作っては全部完食させるので、久々知の振舞う料理は豆腐地獄と呼ばれていた。
が、竹谷が食べに行った頃からはデザイン重視に頑張り、凝った料理を少しずつ振舞うようになった。久々知の料理は竹谷が食べてきたどんなモノよりも美味しく、それが分かってからは時折久々知の豆腐料理を頂くことにしている。
「じゃあ、今から食堂来いよ!」
「あぁ!」
久々知が食べてもらえる嬉しさを隠すことなく笑顔で走るので、嬉しくなって竹谷も笑顔になった。元々は境遇が一緒だからという理由で関わりあうことになった関係なのだが、今はそれ以外のことでもよく語り合うようになっている。
2人が食堂につくと、久々知がジャーン!と言いながらテーブルに置いてある料理を自慢げに見せる。
「おぉ、美味そう!」
今日の料理は豆腐ハンバーグに豆腐の味噌汁、そして冷奴だった。
「今日はいつもと違ってまた普通のメニューにしてみたんだ。最近はデザイン重視だったし、普通の料理も食べて欲しいなって。地味だけどさ」
「いや、でも美味いぞコレ!」
竹谷があまりにも美味い美味いと言いながらバクバクと頬張るので、久々知はたまらず吹き出した。
「そんな急がなくても、食べ物は逃げやしないだろぉ?」
「だって!すっげー美味いんだぜ!?特にコレ、味噌汁。スッゲー美味いなぁ・・・。なぁコレ、おかわりある?」
「あるよ。―――――ハイ、どうぞ」
「おっ、ありがと。いやーにしても美味いな。お前、これからもずっと俺に味噌汁作ってくんない?」
「いいけど、どうしたんだ、急に」
「マジか!ありがと、兵助!じゃ、御馳走様でしたっ!」
自分と会話してる間にいつの間に食べきった
のか、竹谷は丁寧に手を合わせ、綺麗に平らげた後の皿を久々知に渡して竹谷は何故か満面の笑みで走り去っていく。
そんなに自分の料理が美味しかったのかな、と内心嬉しく思いながら、久々知は食器を洗おうとしたとき、
「今時あんなこと言う人いるのね〜」
食堂のおばちゃんが入口からひょっこり顔を出した。
「あ、食堂のおばちゃん」
「ごめんなさいね〜、盗み聞きするつもりはなかったんだけど、入りづらくてね〜。だってあの子あんなこと言うんだもの。古いわね〜」
「え・・・?あいつなんか言いましたっけ」
頬を赤らめてまるで若い女子のようにキャーとか言っているおばちゃんに眉をひそめなが
ら、久々知は尋ねる。
「あらやだ、気づかなかったの?私はてっきり
気づいてて承諾したんだと思ってたわ」
「・・・?」
「あの子ってばあんたに味噌汁これからも作っ
てくれって言ってたじゃない」
「え、あぁ、言ってましたけど・・・」
「それって、“奥さんになって毎日味噌汁作っ
てくれよ”ってことじゃないの〜!良かったわ
ね!」
「お、奥・・・えぇぇええぇ―――――
―////!!!??」
がちゃんと音を立てて食器が手から滑り落ち
てシンクに落ちる。
割れてはいないみたいだけど、今はそんなこ
とどうでもよくて。
「お、おおお、奥、奥さ、って、俺が!?は、八左衛門・・・」
ふらっと視界が歪んだ次の瞬間には、体から
力が抜けて倒れ込んでしまった。
おばちゃんが大丈夫!?と言いながら自分を背
負って走る頃には、もう久々知の意識は飛んで
いた。
しかし、久々知がこれ以上大変なこと―――
―面と向かって竹谷に告白されるのは、そう遠
い未来のことではなかった。