stay on...
□Bewunderung
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学校にもなれて、しばらくたったある休みの日、私は家の近くにあるテニスコートの前を通りかかった。
…ふと、前世を思い出す。
犬の散歩をしている時に、中学校の横にあるテニスコートを見て…思想に耽ってたっけ。
『懐かしいな…、あの頃から憧れてたんだっけ』
テニスコートには、青髪の少年。
あれはもしかしなくても幸村精市なんだろう。
気付かれない内に、この場から去ろう、そう思ってたのに。
幸「ねぇ、君…」
『…えっと、ごめん。私が視界に入ったら邪魔だろうと思って、今帰ろうとしてたんだけど』
幸「そんな、邪魔じゃないよ」
雰囲気が優しい。
まだ…やっぱり子供なんだな、って思ったけど、幸村からしたら私も同じく子供なんだから、声には出さなかった。
幸「テニス、好きなの?」
『好き…って言うか、興味はあるかな。やってみたいと思った事もあるけどね』
幸「そう、なんだ?」
同じくらいの身長なのに、ほんの少しだけ私の方が大きいから、自然と上目使いになる幸村。
小学生のうちは可愛いのにな…、なんて、中学生にもなると、綺麗と格好良いのが強まって…プラス、怖さが付くから、可愛げなんてものは無くなるだろう。
幸「やればいいのに…。楽しいよ?俺でよければ教えるし…」
『…いや、いいよ。私は…』
言いかけて、ハッとなる。
前世の私は、病気持ちで、病気と言っても運動しなければ何ともないものだったけど。
…どうして断る理由がある?
病気以外だったら、なにもない。
今はもう、違うんだから。
幸「…なに?」
『…とにかく、いいよ、私は』
私が断ると、幸村の目が変わる。
…あぁ、前言撤回。
幸「出会ったばかりで悪いけど…、俺は君みたいに言葉を濁す子はあまり好きじゃないんだ。…君は、何かを隠してないかい?ねぇ、一体、何があったの?」
怖さはこの時からあったみたいだ。
有無を言わせない目、話さないと、何されるか分からない。
苦手、だ、彼は好きなキャラ、だったけど、同時に会いたくなかったキャラでもあった。
理由?簡単だ。
彼の厳しさは好きだけど、自分に向けられたくなかったから。
『…本当に、会ったばかりなのに失礼だね、君は。傷口を抉られる気分だよ…。…いいよ、話してあげるから。君が、一体何を思うかは知らないけどね。あと言っておくよ、私は君みたいな子、苦手だし嫌いなんだ。…でもね、将来的に君はとても強くなる。身体的にも精神的にも。…だから、私は君が好きだ』
幸「え…?」
『どうせ、いつかは話さなくちゃいけなくなる時がくる。だから、話すよ』
けして、初めて会った人に、話す内容では無いのだけど。
『信じなくていいよ。…信じられない話をするんだから』
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