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□メリークリスマスのメリーってなに?羊?
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『歌舞伎町冬のベストカップルコンテスト〜落ちこんだりもしたけれど 私たちはサンタです〜』
ー12月24日クリスマスイヴのその日、歌舞伎町主催で行われる、一番お似合いなカップル・ベストカップルを決めるという聖夜に相応しいタイトル通りの大会。
「……いや、タイトル通りっつーかサブタイトルがおかしいんですけど おもいっきり聞いたことあるんですけど。
サブタイっつーかキャッチコピーなんですけど」
明らかに糸井重里だかジブリだかの影響を大きく受けた大会名に早速ツッコむのは、少年の眼鏡、間違った、眼鏡の少年、新八である。
「で?その大会が何なんだよトンボ」
「山崎です、旦那。どっちかっていうとキキでお願いします」
「カラダは大人!頭脳は子供!その名も迷探偵困難!!」
「いやそれただの役立たず!!」
「神楽ちゃん、中の人ネタはいいから…」
「で?何なのアムル・ザキ」
「山崎です」
年中無休で働く組織において、オフというものは一人一人に数日ずつローテーションで与えられる。
山崎退、真選組監察方。
その男が今日、久しぶりの休暇を使ってまで万事屋を訪れたのは他でもない。
依頼があるからだ。
その内容は組織の自分の扱いが酷いとか、何処ぞの副長が酷いとか、何処ぞの隊長が酷いとか、はたまたゴリラのストーキングの尻拭いが面倒くさいとか、そういった類のものでは無かった。
むしろ真選組なんてこれっぽっちも関わっていない、非常に自分的な、個人的なことであった。
「旦那!俺…この大会に…た、たたた…たまさんと!出たいんです!!」
「………」
「………」
「…ああ、そう」
「……え?」
「まあ、頑張れや」
「いやいやいや…手伝って下さいよ!」
「んなモンてめーでなんとかすりゃいいだろーが」
「それができないから頼みに来てんでしょうが!!」
銀時は言いながら立ち上がり、和室の襖を開ける。
その部屋には敷きっぱなしの布団が。
「じゃ、新八神楽、あとよろしく」
「ちょっと待てェェェェェェェ!!!」
立ち上がってツッコむ山崎。
「あ?んだ、文句あっか」
「文句しかねーよ!!なに客放置して寝ようとしてんですか!!しかも真っ昼間から本格的に布団で寝るってどんだけダメ人間だよ!!!」
「ソファで寝たら次の日腰めっちゃ痛いんだよ」
「知らねーよ!」
なんとか銀時をソファに連れ戻そうと山崎が奮闘していると、お茶を入れていた新八が台所から戻ってくる。
「ちょっと銀さん、仮にも依頼人にそんな態度じゃダメじゃないですか」
入れてきたお茶を山崎の前に置き、新八は言う。
「要するにこういうことですよね。
山崎さんは例の大会にたまさんを誘いたいが、直接言う勇気はないチキンだ。
だから銀さんを買収し、銀さんからの命令という形で騙し騙し大会にエントリーさせたいと」
「うんまあ…そういうカンジなんだけどね、言葉が刺々しい気がするのは俺だけ?
ってか、旦那を買収っつーか万事屋ってそういうもんだよね、金払って手伝って貰うんだもんね、間違ってないよね俺」
「銀さんどうします?とりあえず話だけ通して判断はたまさんに任せましょうか?」
寝るのを諦めた銀時は交渉へ乗り出す。
「賞金全部よこせや」
「は?」
「その大会、優勝すりゃ賞金ぐらい出んだろ。それぜんぶよこせ」
そう言うと山崎は一瞬呆気にとられたような顔をし、すぐに何か考えこむような顔をした。
「………」
「おいおいどうしたアルカ〜、まさか今更実は賞金が目当てでしたなんて言わないアルヨな〜?」
「…ち、違いますよ」
「じゃあ、いいアルカ〜?お目当てのもん全部貰っちゃってぇ」
「ちょっと神楽ちゃん!」
いくらなんでも全額は…ととりあえずなだめる新八。
「………」
このとき、山崎は迷っていた。
実はこのベストカップルコンテスト、賞金なんて出ないのだ。
優勝しても、貰えるモノは100均で買えるようなペアのメッキ冠。そしてこの男の一番の目当てである……
(たまさんとサンタの格好でツーショット写真んんんんんん!!!
どうする!!今旦那達は完全に勘違いしている!このまま誤魔化し抜けば!この金の亡者共ならエントリーの手伝いどころか、アリもしない賞金の為に優勝まで支援してくれるだろう…!しかし今の流れで賞金が出ないと明かせば、途端に依頼は断わられかねない!!どうする!!)
「おい」
依頼人の長考に耐えられなくなった銀時が、答えをせかす。
「どっちなんだよ、さっさとしねーとテメーの有り金絞りとった挙句、窓から放り投げるぞ」
「いや銀さん、犯罪ですからそれ」
(例え今は誤魔化しきったとして、ばれた時の俺の身の安全は保証できない。それに嘘をつくんだ、一応俺にも良心がある…!くっ…俺は…俺は…!!)
「…分かりました」
「!」
(たまさんと!)
「優勝したら、賞金全額を旦那方に譲りましょう!!」
(どうしてもツーショットが撮りたいんじゃァァァァ!!!)
…男の欲望が良心に勝った瞬間だったと言う。
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