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□動物園っていったら旭山かサファリか志村
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「姉上っ!次何を見ます?そうだな…サルなんてどうです?あ、九兵衛さんとこでいつも見てるかっ」

「ふふふ、新ちゃんったらはしゃいじゃって…焦らなくても動物達は逃げやしないわよ〜」

そう、動物達は逃げるわけがない。ここは動物園なんだから。
立派な檻が動物と人との間にしっかりと境界線を引いている。

「ははっ、久しぶりに来たもんだからテンション上がっちゃって!
はは!ははは…」

「もう新ちゃんったら〜、そうね次は鹿なんてどう?」

「いいですね!鹿!行きましょう」

鹿し。
いや、しかしだ。

僕、志村新八は何も本当に小学生のようにはしゃいでいるのではなく、むしろ今の僕には猿だろうが鹿だろうが、先ほどのほぼ確信犯な間違いが原作小説からの引用だろうがどうでもいいのだ。

「あ、ちょっとトイレに行って来るわね」

「あ、はい!」

そんなことより…!

ザザッ

「こちら新八!銀さん!応答願います!!銀さん!」

『うるせーな、んだよ聞こえてるっつーの。どうぞ?』

取り出した無線に周りの人の視線が突き刺さるが、それもこの際どうでもいい。

「銀さん今どこにいるんですか!?ちゃんと打ち合わせ通りに動いてんでしょうね!…どうぞ?」

『だーいじょうぶだよ、ちゃんとてめーの指示通り猿公どもの檻の前に待機してるぜ。すいませーん!パフェ追加で!」

「いやウソつけェェェェェ!!!
どこの世界に猿見ながらティータイム過ごす奴がいるよ!!
どうせファミレスかどっかにいるんだろ!そこどこだ!!」

『…スターバックス?』

「んなオシャレなとこ行く勇気ないでしょアンタ!見栄はらんでいいわ」

『ほんとだって。今スタバでスタンバってます』

「上手くねーんだよ!!!」


…まったく。
端からこれじゃ、ちゃんと最後までシナリオが進むか不安だよ……。


というのも実は、今日は姉上の誕生日ということでサプライズを計画しているのだが、銀さん達は別働隊として動き、僕が姉上を誘導しあたかも偶然のように楽しいことが次々と起こる!…という手筈のはずなのだ。しかし仕掛け役がいないと誘導のしようがない。

「なのになんでまだパークにすら入ってないんだよ!!」

『そう焦んなよ、神楽はもう入ってるらしいぜ?』

ざざざっ!

『応答願うアル!新八!今入ったアルヨ』

「神楽ちゃん!今どの辺りにいるの!?」

『ゴリラゴリラゴリラwithカグラアル』

「は!?
もう一回言うね、はっ!!?
何言ってんの神楽ちゃん!?」

『スタバのメニュー風に言ってみたネ』

「どの辺が!?ゴリラ連呼しただけだよね!?
カタカナ並べりゃなんでもいいってもんじゃねーんだよ!!」

「…新ちゃん?」

……!!

「あ、姉上っ!!」

しまった聞かれたか!?

「今誰かと喋ってなかった?」

「え、えぇぇ?いえ?誰とも?」

「そう…?おかしいわね、今なんだか聞き覚えのある声がしたような気がしたんだけど…」

「き、気のせいですよ、きっと!」

「いや〜、ばれちゃいましたか」

「え?」

!?…誰だ?

無線からの声じゃない。
もちろん僕でもない。

この声は…!

「実はね、今日お妙さんが誕生日だって聞いてそんな大切な日に何かあってはいけないと思い、こうして人知れずボディーガードをしていた次第ですよ」

「こ、近藤さん!!…っつーかわざわざ着ぐるみに入ってまで…」

しかしまた面倒なのが…!

「まあ、そうですか。人知れず死んで頂けたら最高の誕生日プレゼントなんですけどね」

「ははは、照れちゃってお妙さんったら〜。さ!どこに行きます?キリンですか?ゾウですか?それともライオンなんてのも」

「ゴリラで。一匹逃げ出したみたいなんで返しにいかないと」

そう言って姉上はゴリ…近藤さんをシメ上げながらゴリラのいる檻へ進んでいく。

マズイ!!!

最初のチェックポイントは銀さんがいる(はずの)猿の檻だ!
そっちに行ってくれないとォ!!

さらに面倒なことにゴリラは二つ目のチェックポイントとして神楽ちゃんに頼んでいたはず…、

どうしよう!銀さんからの指示があってから神楽ちゃんが動く予定だったから、今行ったら準備も何もしてない状態で鉢合わせしてしまうかもしれない!!

止めないと!!

「あ、姉上アレェェェェ!
見てアレ!!」

「 ? なあに新ちゃん」

「向こうに今なんかいませんでした!!?」

「何かって…一体何がいたっていうのよ?」

「え…えと…」

ううっ!何もいないです、すいません!ほんとすいません!!

「アレですよ!…アレ!!アレがいた!!」

あっはっは!アレってなんだろう!!やけくそだコノヤロー!!

「……あぁ!分かったわアレね!アレ!」

え、分かったの?
僕が分かってないのに!?

「そうと分かれば早く行きましょう!追いかけないと!」

「え、あ、はい!!さ、猿の方へ行きましたよ!」

っつーかアレってなんだ!!?

「急ぎましょう!溶けてしまうわ!」

「溶けるんですかァ!?」

「蒸発しちゃう!!」

いやマジで何なのアレェェェ!?
体の構成物質ほぼ水かなんかなの!!?
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