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□I'm home!
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「パチンコ行ってくるわー」

時刻は午前。天気は晴れ。

「いってらっしゃいアル」
「あ、銀さん昼には一回帰ってきて下さいよ!」
「言われなくても外で食う金なんてねーよ」

落ちる紅葉が窓に映る。
季節は秋。

「分かってるならパチンコ行かないで下さいよ…」
「いってきまァす」

ピシャリ

「……神楽ちゃん」

今日は仕事が入っていない。いつもなら各々自由に時間を過ごすところだ。実際銀時は今日もそうしている。

「…おうよ新八ィ」

しかし、残された万事屋の従業員二人には、今日は遊んでなどいられない理由があった。

「「やるか…!」」



「新八!ケーキはどうするネ」

「心配ないよ、万事屋に来る途中ケーキ屋によってきた!…ほら、この通り!」

「ご飯どうするネ!誰が作るアルか!?」

「フフ…、今日は特別に、姉上が出前をとってくれたんだ!」

「飾り付けは!?なんかパーティーみたいなん、いっぱい飾りたいアル!」

「えーと…、そこの引き出しに確か…ああ違うその上!そう、そこ!」

と、いう感じで何やら慌ただしく準備を始める二人。

「新八ィィ!なんかもうむちゃくちゃ楽しい感じにするアル!妥協は許さないネ!」

「分かってるって!なんたって今日は!」

「銀ちゃんの誕生日アルからな!!……定春そこのテープ取ってぇ!」

「わん!」

そう。本日10月10日は、万事屋当主にして彼らの上司である坂田銀時の誕生日なのであった。

「ところで神楽ちゃん、プレゼントって用意してあるの?」

「当たり前アル!まあ、給料くれないから金無くて手作りだけどな!」

そう言う神楽に少し驚きながら、それでも飾り付けの手だけは止めずに新八が問う。

「手作りって…一体何を!?まさか食べ物じゃないだろうね!?」

「なんだヨ、手作り料理だったらダメな理由でもあんのか眼鏡コラ」

いやいや、別に…と口篭る新八にとりあえず拳を一発お見舞いしておき、こう続ける。

「フン、まあ心配すんな。食べ物じゃないネ。」

「じゃ、一体何…」

出てくる鼻血を抑えながら、新八が再度問う。

「それは渡すときのお楽しみアル!」

胸を張って言う神楽に、どうせロクなもんじゃないんだろうなと心の中で呟いた新八だが、どうやらそれが新八のついた深い溜息で伝わってしまったようでもう一度神楽に殴られるのであった。哀れ新八。

「お前の方こそ、プレゼント何ヨ」

「えっと…あ、これこれ」

「何アルか、コレ」

「最近流行ってんだってさ、僕らの分も買ったからお揃いだよ」

「おおぉ…」

そう感嘆の声を上げ、新八の出した物を輝く目で見つめる神楽。

「これがあの…かの尾田栄一郎が絶賛した代物アルか」

「うん、そうだけど普通に名前だすのやめようか!」

神楽の手に握られていたのは、小さなストラップ…なのだが、勿論ただのストラップという訳ではなく、三つあるストラップの先には全て表札のような形をした銀色のプレートがぶら下がっており、三つ共そこに「万事屋」と彫ってあった。お土産売り場とかでよくある、注文した文字をその場ですぐに彫ってくれるあれである。

「なんか神楽ちゃんこういうの好きでしょ、それに銀さんも恥ずかしがってるだけで、結構嬉しいと思うんだ、こんなの」

そうはにかむ新八だが、キモい!とまたも神楽に殴られるのであった。

「女にされりゃ嬉しいだろうが、男にされりゃキモいだけアルお揃いなんて。っつーことでこれは私からのプレゼントにするアルヨ!」

「いや手柄横取りしたいだけじゃねーか!!ホントはお前用意してねーんだろプレゼント!!」

「失敬な!ちゃんと用意してあるネ!ただなんかこっちの方が金かかってるから銀ちゃんの態度も甘くなってあわよくば晩飯のリクエスト聞いてもらえんじゃねーかと…」

「いや誕生日プレゼント何だと思ってんだ!!ひとのエビでタイを釣ろうとしないでくれる!?」

返せ!これは僕が渡すんだよ!えー、私のだけでも今寄越せヨ!ダメだって、ちょ、返せぇぇぇ!などとグダグダ言いながらも、着々と万事屋はパーティー会場へと姿を変えていくのであった。

最高の誕生日にしよう。二人と(若干眠たげな)一匹は同じ気持ちで準備を進める。

ハッピーバースデイ銀さん。早く帰って来て下さいよ。今日はあんたの誕生日なんだから。








「…そろそろ帰るとすっかー」

「あれ?銀さんもう帰んの?」

「おー、腹も減ったしな。それに、待ちくたびれてケーキ全部食われたらたまんねえ」

「ケーキ?何、今日誰か誕生日なの?じゃあしょうがないなー、
さっさと帰って祝ってやらねーとね」

「ああ、そうするよ。じゃあな長谷川さん」

歩き出して、一人ニヤリと笑う銀時。

「さて…夜中にこそこそ作ってたお裁縫はできたのかねぇ…」

ー不器用なくせに手作りなんてすんじゃねーよ。あ、俺が給料ださねーからか。新八の方は…恥ずかし気もなく女々しいもんでも買ってんだろうな。

ー…いつのまにかバカどもの思考が読めてきたな。あー、やだやだ。バカがうつる。

「あ、銀さんお帰りなさい!!」

「銀ちゃん!お帰りアル!!」

万事屋に着くと、二人が嬉しそうに銀時を出迎えた。



ーったく、だから嫌なんだ。



「…おう。


…………ただいま」





ー嬉しいのまで、うつっちまう。








(終わり)

Happy birthday 銀さん!!
(12・10/10)

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