宝庫
□失言には気をつけよう
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失言には気をつけよう
「ヒック…テメーいい加減にしとけよ…ック…この俺にお前ごときが、ヒック、勝てるとでも思ってんのか、ああん?」
「何言ってんだ…ヒック、そりゃこっちのセリフだ、ック。降参するなら…ヒック、今のうちだぞ、万事屋」
「ふざけんなヨこのクソドSゥゥゥ!!」
「ふざけてんのはテメーでィ、クソチャイナァァァ!!」
「新八くん、お妙さんって明日は出勤日かなあ?」
「って今そんな話してる場合じゃないでしょ?!」
どうしてこうなった。
真選組の屯所の、ある部屋の中。銀さんと土方さんは飲み比べをしていて、神楽ちゃんと沖田さんは、殴る蹴るの激しいバトルを繰り広げている。
部屋の中は、お皿やら酒瓶やらご飯やら神楽ちゃんやら座布団やらジャスタウェイやら沖田さんやら灰皿やら靴下やら山崎さんやら、とにかくもういろんな物が飛び交っている。
どうしてこうなった。
「お前…ヒック。俺はすげーんだぞ。なんたって…ック、ジャンプ漫画の主人公なんだからよォ」
「上等だ…ヒック。こっちだってなあ…お前、本気だしゃあ、いつでもこんな漫画の主人公乗っ取れるからね。あえてしないだけで、できるからね…ヒック」
…確か、事の発端は夕方6時。
この間僕たちが偶然ある事件現場に居合わせて、解決した事があった。だから僕たちは、御礼が貰えるとかで真選組に呼ばれたんだ。
そしたら結局やっぱり喧嘩が始まって、気付いたらこの惨状。部屋の外に、何人か人がいる気配がする。隊士のみなさんだろうけど、多分この部屋に入って止める勇気が無いんだろうな。
「おりゃああああ!!死ねェェクソチャイナァァァ!!!」
「死ぬのはお前ネ、クソドSゥゥゥ!!!」
ガシャーン!!バキッ!!ドガァァァン!!
…というか、僕だって逃げ出したい。山崎さんみたいに巻き込まれる前に。
「いやー、今日はみんな盛り上がってるなあ!」
「だからなんでアンタはそんな呑気なんですか?!」
ドゴォォォン!!
…あ、とうとう山崎さんが壁にめりこんだ。
「…ん?新八くん、アイツらを見てみろ」
「はい?」
「「Zzzz…」」
銀さんと土方さんが………寝てる。しかも何故か、「+」の形に重なって。
…なんでそうなったの?
思わず、僕と近藤さんはクスッと笑った。さっきまであんなに言い合ってたのに、いつの間に寝てたんだか。
「こいつら、やっぱり似てるよなあ」
「…ええ、そうですね」
いっそ普通に友達になればいいのに。ってちょっと思ったけど、仲良く肩組む二人を想像したらめちゃくちゃ違和感があった。
…あれ、なんか静かになった?
沖田さんたちは一体何して…あ。
「次はこれで勝負だコノヤロー!!」
「上等でィ!!」
…ゲーム対決してる。
「「…はは」」
僕と近藤さんは、苦笑いをした。この二人って本当になんか…仲良いんだよなあ。本人達に自覚は無いんだろうけど。
沖田さんは歳が僕と二つくらいしか違わないのに真選組の一番隊の隊長なんてやってて、普段はなんか「すごい人」って感じがしちゃうけど…神楽ちゃんと喧嘩してる沖田さんには、親近感が持てる。
「この二人って…」
思わず「仲良いですよね」と言いかけて、慌てて止めた。もし二人に聞かれたら、絶対に怒られそうだ。
――ガタン!
?何の音だろ…あ、山崎さんが復活したみたいだ。めりこんでた壁から体を話して、こっちに歩いて来る。
「…ふう、やれやれ。大変な目にあったよ」
「お疲れ様です、山崎さん」
「ザキ、災難だったな」
「ええ、本当ですよ。…ん?」
山崎さんが、ゲーム対決をしてる二人に気付いたらしい。
「…呑気だなあ、あの二人」
「あはは…」
「でもきっと隊長とチャイナさんって、なんだかんだ仲が良いんですよね」
あ、言っちゃった。
「歳も近いんだし、いっその事付き合っちゃえば良いのに!…なーんてね、あっはっはっは…は……は……は…」
…言っちゃった。
二人同時に、ギロリと殺気立った視線をこちらに向ける。
…ヤバい。これはなんだか、巻き添えくらいそうな雰囲気が…する。
張本人の山崎さんを見ると、大量の冷や汗をかいて固まっていた。
ゆらり。二人が立ち上がる。逃げたい。超逃げたい。でも僕たちはまるで蛇に睨まれた蛙のように、その場から動けない。
「お…俺達は知らんぞ!俺達は無関係だ!なっ、新八くん!!」
「そ、そうですよ!僕と近藤さんは何にも…」
「だよね!俺達も確かに心の中では似たような事考えてたけど、何も言ってないぞ!!」
「え゙え゙え゙え゙え゙え゙?!ちょっと、何言ってんですか近藤さんんん!!」
馬鹿正直にも程があるだろォォォ!!しかも、思いっきり人の事巻き添えにしやがってェェ!!
ギラン。
…あ、二人の目つきが…てゆーか…完璧に攻撃体制に入っ…
ドガシャアァァァァン!!!
「「「ギャアァァアアァァァア!!」」」
End.