テニスの王子様

□忘れ物
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「……っ!」


ない、ないないない!


入れたはずやのに!


いつもの使い慣れてるスクールバックにも、


部活で愛用しているラケットバックにも入ってない。


「あかん、どないしよ……」


異変に気付いた、クラスメイト―謙也が近付いてくる。


「どないしたん?」


「……ノート忘れた。」


「ノート?なんか問題あるん?」


「大有りや!」


今日は出席番号的に当たる日なのだ。


あの問題は意外と難しかった!


しかも、数学は一限目!


解いてる暇ないやん!


「ノート借りてくればええんとちゃうん?」


「!」


借りてくる!


良いと思う。


けど、自分の為にならんやろ……。


「しっかし、白石も可哀想やなー。数学の田中めっちゃ怖いもんな。」


「か、借りてくるわ!」


謙也の言葉を聞いて思い出す。


数学の田中は笑いをしらない。


どう誤魔化しても、キレられる!


数学が顧問の渡邊なら良かった!


足早に教室でる。


「……俺、無駄多すぎや。」


向かったのは、3年8組。


小春がいるクラス。


教室を覗けば、小春とユウジが和気あいあいと話してる。


教室には入らず、声をかけるだけ。


「小春ーっ!数学のノート持っとるか?」


声に気付き、小春は立ち上がり笑顔でやってくる。


置いていかれたユウジは一瞬寂しそうな顔をするが、


ちらりとこちらをみて、ため息をつく。


邪魔しちゃたなぁ…。


「どないしたの、蔵リン?」


きゃぴきゃぴとした声はまるで女子のよう。


「……すまん!数学のノート貸してくれへん!?」


顔の前で手を合わせ、懇願。


「あら、残念。今日は数学ないねん。」


ま さ か の !


あかん、予想外やった。


どないしよ、他に借りるやつは……。


「俺、持ってるで。」


バッ!


大きく大袈裟に顔を上げると、ついさっきため息をつかれたユウジが立っていた。


「ユウくん、今日は数学ないんとちゃうん?」


「置き勉してんねん。」


いつもだったら、怒るとこやけど、今日はありがたい!


「か、貸してくれるか!?」


「おん」


手渡されたノートを大切に抱き締める。


「おおきに!」


*


「次、白石。」


田中、心配すな。


宿題、やってきたで!


ユウジが。


ノートを開き、教科書のページを確認。


ノートを……。


なんやこれ。


ノートには落書きだらけ。

小春、と所々に書かれてるだけで後は答えだけの書く意味がないノート。


「どうした?」


ドキリ。


田中の声が痛い。


「すみません、忘れました。」


「は、さっきまでどや顔でノートめくっとったやろ!」


「……ほんますみません!」


予想外すぎるやろ、あいつ真面目に授業受けてんのか!


ノートにでっかく豆腐の角に頭ぶつけて死ね!、と書いてやった。

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